有線の音楽で「幸せすぎて苦しい」という歌詞を聞き「どんな乙女ココだ!」と心の中で突っ込みました。ココは小松が好きすぎて、息もできなくなりそうですよね?
料理陰陽師小松 其の六
「暗いから火をつけてくれよ。蝋燭ぐらいあるだろ? あと喉かわいたから甘いお茶くれ」
「ぼくの話を聞いてないだろ」
怒った後のトリコの台詞が「お茶くれ」とは、信じられない。いやトリコだから有り得るか。
などと納得している場合ではない。
妖怪の名は特別だ。妖怪同士だろうが普通は名乗りあわない。
他所からは「美食山の鬼大将」とか「美食山の鴉天狗」と呼ばれる。
名前を教えるなんて、いずれ手にかける人間相手にしても油断しすぎだ。
そう、この人間には死相が視える。
最初はぼくが手にかけるからだと思った。
次に、この大怪我で死ぬのかと思った。
今はトリコが手にかけるからだと考えに行き当たったのだが・・・なにが原因でこの人間は死ぬ?
陰陽師である以上、常に死と隣り合わせの人生だ。
ひとの未来が視えるといっても、所詮はその時にならないとわからない「読み」が多い。
とりあえず、蝋燭で明かりをつけ、囲炉裏に火をつけ鉄瓶で湯を沸かす。
その間に茶葉と急須と湯のみの準備をした。茶棚に眠る茶器は四人分あり、今回久々に三人分用意した。
湯のみにお茶を注ぐと甘い匂いが洞窟内に漂う。
トリコは一気に飲むと即座におかわりを要求する。人間はゆっくりと飲んだ。
妖怪が飲むものをためらいもせずに口にするなんて凄いとしか言いようがない。
「おいしい」と彼は感想を口にした。
「こいつの淹れたお茶はうまいだろ」
「よく言う。なにを飲んでもうまいか苦いしか言わない奴が」
自慢げなトリコに軽く腹を立て文句を言う。調子のいい笑い声が返ってきた。
「仲がいいんですね」
どこか呑気な人間に、どこまで警戒すればいいのか悩みどころだ。
続く