問答無用なトリコさんも好きですが、「小松ーぅ」と叫ぶトリコさんも好きです。
こちらは後者かな?
料陰陽師小松 其の五
体が重い。と思ったら、体が熱い、と思った。次に痛いと思う。
なんだこれはと焦って目を開けようとしたら、まぶたの重さにびっくりする。
どうにかして目をあければあたりは暗くてさらに驚いた。
土と干草の匂いがする。指が触れるのは干草だ。
ここは、どこ?
「動かない方がいい」
覚えのない声が暗闇から聞こえる。声は近くから聞こえるのに、どこにいるのか気配が掴めない。
「きみは美食山の入り口で倒れた。覚えているかい?」
落ち着いた、感情を感じさせない声に問われて、気を失う前のことを思い出す。
都を荒らす妖怪を退治にしに行って、予想以上の強さに命からがら逃げてきた。
・・・なんで美食山に来ちゃったんだろ?
「あなたが助けてくれたんですか?」
「ぼくじゃない、仲間が助けろとうるさいから手当てしただけだ」
仲間?
「気がついたか、小松」
遠くから声がした。知っている声に安堵する。
「トリコさん!」
思わず起き上がろうとしたら、全身に激痛が走って倒れる。
「おいおい、死にかけてたんだから気をつけろよ」
「ご心配をおかけしました。こちらの方はトリコさんのお友達なんですよね? 助けてくださってありがとうございます}
「気にするな。おまえにはいつもうまい飯食わせてもらってるしな・・・っ」
トリコさんがなにか言い終える前に、豪快な音と「いて」と叫ぶトリコさんの声があたりに響いた。
なにが起きたかわからないけど、トリコさんによくないことが起きたのだけは察せられた。
「人間に名前を明かすとは何事だ!」
もの凄い怒声と怒気が傷口に触る。このひとも妖怪なんだと肌で感じる一幕だ。
続く