グルメ177「ドドリアンボム」
再生屋与作の弟子である鉄平だが、自分専用の再生所も持ち独立もしている。ただし、癒しの国ライフと違い、彼が腰を落ち着ける場所は不毛の大地だ。
その昔、ノッキングマスター次郎が愛した土地だった。今は生き物が存在しないが、だからこそ自分が拠点にするに相応しい場所だと鉄平は思っている。
生活できる土地ではないためひとは誰も寄り付かず、研究に没頭できるのが鉄平は気にいっていた。
たまに来るのは再生の依頼か、弟子候補か。本当にごく稀に、再生屋鉄平とは関係ない客が訪れる。
「トリコと小松くんがここに寄ったのを最後に消息が不明になった」
マントを風にはためかせてエンペラークロウとともに現れたココが、「なにか知っているか?」と鉄平に質問する。
「ドドリアンボムの話をしたら獲りに行くと言ってた」
世界一臭い食材の話をすればココの顔が歪んだ。
「それは・・・チャレンジすぎる。なにに手間取っているか不思議だったけど、臭いと戦っていたのか」
ため息を零した後、去ろうとするココに「お茶を」と鉄平は声をかけるが彼は断った。
「こういった場所は苦手で」
曖昧な表現に鉄平は首を傾げる。
「果てたものたちの残り香が視える」
好意的ではない響きがあった。
「再生屋否定派?」
人為的な再生を否定する者がいるのも事実だ。
「否定できる側の人間じゃあない」
ココはうっすらと笑った。彼が実験の積み重ねによってできた毒人間だというのを知るのは少ない。鉄平も知らない者のひとりだ。ココの唐突な台詞を彼なりに解釈した。
「もしかしてゼブラを捕まえたことを怒ってるとか?」
鉄平の指摘に、ココの表情が再び歪んだ。
「それは絶対にない」
能面みたいな顔に個性が浮かぶ。
鉄平は与作の協力もあってゼブラを捕まえることができたが、依頼だからであって彼への悪感情はない。
「おれは喋りすぎって言われるけど、あんたは言葉足らずだね」
先日トリコたちが味わったカフェアリをココに出す。
「一杯のお茶に付き合うのも、悪くないんじゃない?」
保護したくなるのは再生屋の性か。
終わり
まとまりがないまま・・・。