にゃんにゃんにゃん
トリコさんとココさんが軽い言い争いはよくあるけど、今回は珍しく長引いた。
スイーツハウスのキッチンと居間は距離があるので会話までは聞き取れないから内容がわからない。料理ができてもふたりの話は終わっていなかった。
「なにがあったんです?」
テーブルに皿を並べながら聞いた。多分、ぼくは油断していたんだ。
「今日は猫の日だから猫プレイしようと思って」
ココさんの口から猫プレイなんて単語がでると思ったひと、正直に手をあげてください、先生怒りませんと軽く現実逃避した。
「ぼくは小松くんのためなら猫耳をつけられる」
さらにとどめをさしてくれた。
「見ろ、小松が引いたじゃねえか」
トリコさんが怒った。
「第一、おれはおまえの猫耳なんて見ても楽しくない」
「ぼくだってトリコの猫耳は見たくない」
この話はどうすれば決着がつくのだろうか?
「おまえは普段イベントごとにうるさいのに、どうして猫の日に非協力的なんだ」
ココさんの指摘はもっともだった。今月は節分、バレンタインとイベントが二回あったので大変だった。いろいろと・・・。
「おれが楽しみにしてるイベントは食い物に関係する日だ」
トリコさんは潔かった。
「ちなみに三月はちらし寿司プレイ、ホワイトディプレイ、小松の誕生日プレイとイベント盛りだくさんだよな」
最初と最後のプレイの意味がわかりません!!!
「ごはんが冷めます」
ココさんの暴挙を止めてくれるトリコさんには悪いけど、ぼくは早く話を終わらせたかった。
ぼくも料理人だ、みんなが喜ぶイベントには敏感でありたいと常々思っている。だけど、このふたりが関わるイベントとなれば話は別だ。そういった日の夜はイベントにかこつけて激しく・・・ごめん、聞かなかったことにしてください。
「飯の前に言っておく、おまえは間違っている、ココ。猫耳なら小松だ!」
トリコさんはいやな力説をした。
「それはぼくも考えたけど、理性が持つかどうか自信がなくて」
今日は・・・いじめの日だ。
「普通でもいっぱいいっぱいなのに勘弁してください」
本当に勘弁してほしかった。こんな話を聞いた後で食事なんて落ち着かない。三人集まれば夜を交えるのはいつものことだけど、その夜を考えながら一緒に過ごすなんて恥ずかしすぎてふたりの顔がまともに見れない。これ以上、具体的な話をされたら羞恥で死ぬ。
「ほ、う・・・」
「ふーん」
うなずく声によくないものを感じて見れば、どこかの絵本に出てくるような猫の目をしたふたりがいた。
にゃん。
終わり