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WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2024'09.22.Sun
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2011'03.07.Mon

気付けば一週間後の今日はホワイトデー!


6-4/リーマンココマ

 小松の手首を握るココの手の力が強くなる。痛みや否定もできずに小松が無言を貫けば、ココは手を離した。
「心外だな」
 冷たい指が小松の顎をすくい、上をむかせる。あ、と小松が思う間もなくココがキスをした。重ねるだけで終わらないディープなキスに小松は呻き声をあげる。両手を使ってココを押し戻そうと小松はもがくが相手はびくともしない。舌を根っこから抜かれそうな激しいキスに息苦しくなった。
「気をつけて」
 同じ熱を持った唇がささやく。
「これでもぼくは、結構我慢しているんだよ?」
「ココ、さん」
 キスに翻弄された口はうまく動かず、小松は赤くなった。
「きみの気持ちが落ち着くまで大人しくしたいのに・・・」
 ココが小松の耳元で呟き、柔らかな耳たぶを噛んだ。小松の体が小さく跳ねる。
「ぼくの本気をきみの心と体に教え込みたくなる」
 静かながら、凄みのある声だった。小松は震えそうになる。今まで一度もむけられたことのない情熱は、小松には荷が重かった。強張った体は手の平からココに伝わり、彼はようやく、小松を解放した。
「怖がらせてごめん」
 ココは小松から一歩下がった。
「ピークもすぎたし、今日はもうあがりなさい」
 ココは小松に告げるとスタッフルームから出ていった。
 顔が、火傷した手よりも熱い。小松は呆然としながらも、もう一度氷水に手を浸した。痛いほどに冷たいのに、熱はどこにも逃げていかない。
 告白以来、ココは小松と適度な距離があった。それは仕事の忙しさのせいもあるが、彼なりに気をつかっていたと今さらながら小松は気づいた。現に、ささやかな接触でココは本音を吐露したのだ。
(あんなふうに激しく求められたら・・・)
 考えただけで小松は頭が茹だった。
(だから、かな)
 距離をあけた理由を想像する。小松はココが望むような関係は結べない。だからといって、なにくわぬ顔で同じ職場にいるのもお互い辛いだけだ。
 小松は救急箱から薬を塗ると、着替えて裏口からそっと店をでた。そのまま帰宅せずに、本社に寄る。
 定時は過ぎているが、梅田は会社に残って仕事をしていた。
「お時間を少しだけいただけますか?」
 突然訪ねた非礼を詫びると小松は梅田に切り出した。
「どうしたの?」
「移動を希望します」
 小松の発言は梅田は騒ぎ立てずに受け止めた。
「ぼくは、本店の料理長をつとめる器ではありません。荷が重いです。でも、移動の希望なんて誰に頼めばいいのかわからなくて」
「ココちゃんは? 職場に関わることなら、まず直属の上司に相談するべきじゃない?」
「それは」と、小松は口ごもる。
「ココさんでは話になりません」
「喧嘩でもしたの?」
「そうじゃありません」
 意見の相違程度の仲違いで移動を希望するくらいなら、本店に馴染めなかった頃に動いていた。
「ぼくは自分の料理が本店にふさわしいとは思えません」
「私はぴったりだと思うけど?」
「でも、そうじゃないと言うひともいます」
「例えば?」
 梅田につっこまれて、小松は口を閉ざす。
「食べてもらうひとすべてに満足してもらいたい気持ちはわかるわ。その気持ちはとても大切よ。でも、だからといってすべてに百%の満足を与えられないからやめるなんて傲慢じゃない?」
 梅田は冷静に告げた。傲慢と言われて小松は衝撃を受けた。腕におごりを持ったつもりは一度もない。
「満足してもらいたいから精進する。その気持ちをなくして逃げるなんて楽な選択をしてはだめよ」
 梅田の言葉が否定できず、小松は肩を落として退室した。まっすぐに帰る気にもなれず、小松は飲み屋に入った。空腹にアルコールが染みて、すぐに眠気が襲ってくる。「だめだ」と思わないあたり、疲れが溜まっている証拠だ。閉店になったら起こしてくれるだろうという甘い考えがよぎり、小松は眠りに落ちた。途中、携帯が鳴ったが小松は無視した。

続く
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