7-11は通っているコンビニナンバー1だけど、主にビールとジャンプしか買ってないから対象商品は・・・むしろベーコンの葉サンドイッチとか、虹の実ゼリーとか、小松くんのおぱんつとかでてくれたらよかったのに。
6-2/リーマンココマ
「な、んのことでしょう?」とこたえる口調がしらじらしい。もともとごまかしがきかない性分なので仕方ないが、あまりの下手さにトリコの目が丸くなる。
「なにも、ありません」
固い口調で小松は再び否定した。ココの告白は誰にも相談するつもりはない。自分のなかでこたえがはっきり決まっていたのだ。
「トリコを相談しないのを喜ぶべきか、なにもないという発言を哀しむべきか」
厨房に響く静かな声に、驚いたのは小松だ。いつの間にかココが厨房とホールをつなぐ出入り口に立っていた。トリコはココの気配に気づいていたが、声がかかるまで気づかなかった小松は飛び上がるほど驚いた。
ココの歩みにあわせて黒いコートの裾が揺れる。
「トリコ、席を外してくれないか」
ココは小松を見たままトリコに帰れと告げた。彼の発言に小松はびびる。
「いやだ」
よくないものを感じてトリコが正直にこたえれば、ココは「勝手にしろ」と返した。
「中葉」ココが口にした名前に覚えのある小松は顔色を変え、動揺を教えるはめになる。
「今日の予約リストを数字しか見てなくて反省したよ」
ココがため息をついた。
「誰だ、そいつ?」
トリコが聞いた。
「レストラングルメ、フードライン支店の料理長だ。本店の料理長の候補にあがっていた」
「フードライン支店といえば、グルメタウン支店にも負けず劣らずの支店じゃないですか。本店の料理長になってもおかしくないのに、どうしてならなかったんですか?」
小松の疑問に、ココは再びため息をついた。
「気づかない?」
ココが珍しく、小松に皮肉めいた言い方で返した。
「本店の料理長は小松くんが選ばれたからだよ」
ただしくはココのゴリ押しで小松を本店の料理長に就かせたのだが、当人は事実を知らない。
初対面の人間から悪意をむけられた理由に小松は気づく。本店の味にふさわしいかどうか彼は確認にしに来たのだ。
(満足させられなかった)
認めてもらう以前に、中葉を料理で楽しませられず小松は悔やんだ。中葉だけでない。味の質が落ちた事実は、いずれ皆の舌が知る。
「彼に呼ばれたらしいけど、なにを言われたの?」
「料理に満足していただけなかったようです」
社内の人間でも食べてもらう限り「お客さま」だ。喜んでもらいたいと願うひとになる。
ココは小さな鍋で煮詰めたソースを見やると、スプーンですくって指にとった。春をイメージしてベリーを素材にしたソースは赤い。白い皿やココの指に映える色だった。
ソースを舐めたココは、少し考えてから「小松くんらしからぬ味だね」と冷静に告げた。
「お恥ずかしい限りです」
事実だから他に返しようがない。
(どうしよう)と小松は悩むが、同時に(どうしたら料理に打ち込める?)と解決策を見つけようとする。
迷いが味を狂わせたのなら、迷いを断ち切るべきだと小松は考える。迷いの源であるココを、
(断ち切る?)
できるのかと小松は自問し、知らずココを見た。わかりやすい青年の、思いつめた目を察してココは帰るように告げた。
「送るよ」
ココの言葉に、小松はとっさに「いえ」と拒んだ。
「ひとりで帰れます」
終電はない時間だ。
ココはため息をついた。
「トリコ、小松くんを送ってくれるか?」
「いいぞー」
トリコは気軽にココの依頼に応じる。慌てたのは小松だが、トリコもココも彼の言い分は無視した。
「よかったな、今日は雪が降る予報だったから車で来たんだ」
いつもはバイクで通勤しているトリコだった。
ココが簡単にあいさつをしてふたりの前から去る。トリコは不自然な友人らの態度を見て「ふむ」とうなる。
続く