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WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2024'09.21.Sat
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2011'02.19.Sat
ココさんが動いたとたんに拍手が贈られ、みなさんの期待を知りました。
小松の運命や如何に?!

5話編ラスト・・・! そう5話編です。

5-7/リーマンココマ

 嫉妬からはじまった暴挙はココから冷静さを奪った。
「なにを怒っているんですか?」
 震える小松に、違うとココは言いたかったが、
「きみは何故、逃げようとした」
 相手を責める言い方しかできない。いいよどむ小松に、ココはどうしようもなく哀しくなった。言えないでいる距離が、自分たちの関係を表わしている。
「ひと目見たときから、きみが好きだった」
 最悪な状況での告白だった。もっと大切にしたかったと後悔しても遅い。
「きみが誰かに笑いかけるだけで許せなくなる。閉じ込めたくなる。今でも、ぼくのなかの獰猛な部分がきみに喰らいつきたいと訴えている」
 ココは小松を抱きしめた。たまに、一緒に眠るベッドで寝ぼけたふりをして腕に閉じ込めるしかしなかった。ごまかしを捨てて抱きしめれば胸が熱くなる。
 小松の顔に嫌悪の色が見えない。兼ねてから、彼の好意を感じていたココは、間違えたぶん慎重にことを進めようとする。
「嬉しい、です、けど」
 小松の言葉が不吉に響く。
「ココさんはぼくにとって尊敬する上司で、大切な友人です。それ以外はなりえません」
 小松はココに理解できない言葉で返した。
「ごめんなさい、ぼくはココさんに甘えすぎました」
 小松はココの体押し返す。強い力ではないがココは簡単に揺らいだ。
「帰ります」再び同じ台詞を小松は告げた。ベッドから降りる小松をココは呼び止める。
「納得できない」
「納得してくれなくていいです」
 固い声と頑なな背中がココを拒絶した。
「小松くんが、ぼくを好きじゃないなら諦める。だけど、嬉しいって言われた後に引き下がるなんて無理だ」
「好きといわれたら嬉しいですよ。でもぼくの気持ちはココさんと同じじゃないんです」
 小松はジャケットとカバンを持って寝室から出ようとした。
「送るよ」
 電車の時間もなく、深夜に小松をひとりで帰すつもりのないココはとっさ立ち上がった。正直、訳のわからない拒否のされ方に頭が正常な働きを見せないが、それでも小松を大切にしたい気持ちに変わりはない。望んで、小松の移動を画策して、同じ職場になるよう根回しもしてきたのだ。小松を夢に見る回数は両手を越えているココが、どんな状況であろうと、小松を無下に扱う真似ができるはずがなかった。
「構わないでください」
「構うよ。ばら色で幸せな未来の方が断然いいけど、小松くんを手に入れるためならなんでもするし、できるし、待てる」
 実際に、いろいろやってきたココの言葉は力強い。拒まれたくらいで諦めるくらいなら、はじめから手にいれるために汚い真似はしなかった。
 それは、きっとはじめから意識の根っこにあったものだったが、目先に捕らわれていたココが気づけなかった決意だ。腹を据えたココはふてぶてしく、告白を断られた男とは思えないほど堂々としていた。
「優しくされると、困ります」
 小松が頼りない声で呟いた。
「ぼくの好意はココさんと同じ種類のものじゃありません。ぼくは上司であるココさんと適切な距離をとらないといけません。ぼくがココさんのようなかっこいいひとと釣り合うとは思えません」
 小松の口から次々に溢れる言葉にココは耳を傾けた。数多くの不安がある。彼の抱えるものを考慮せずに、関係を結ぼうとしたココに非がないとは言えない。
「いやなことばかり言ってすみません」
 うな垂れる小松のつむじを見つめながら、追い詰めたのは自分だとココは思った。小松の不安をひとつ残らず記憶にとどめるべく耳を傾ける。
「実際のぼくは卑屈で、ちいさな人間です。ココさんがぼくを好きだと言っても、ぼくはココさんが以前に言った好きなひとが忘れられません」
 か細い声は消え入りそうに小さかった。神妙に聞いていたココだが、最後の一言に顔色が変わる。
 聞き捨てならない、とはこの一言だ。
「いろいろ確認したいけど・・・」
 床に膝をつけたココは、小松と同じ目線で聞いた。
「ぼくを好きだと、自惚れてもいいよね?」
 問いかけに、小松の顔が赤くなる。小松が抱えるものは根深く、簡単に意識を変えるのは無理だとしても、彼のなかに眠る好意を知っているならばかな真似をせずに見守っていける。
「好きだよ、小松くん」
 ふわり、と小松を抱きしめる。優しい気持ちで告げた想いにココは満足した。ひとりよありでも、荒んだ気持ちで告げるよりマシだ。
「ところで、ぼくが以前に言った好きなひとって誰?」

「送りがてら話を聞かせて」と小松に言って、ココは車に乗り込んだ。
 ココが食事もとれないほど忙しかった秋頃の話だと小松はこたえた。部屋に泊まったときに寝ぼけたココが小松に「好きなひとがいる」と話したらしい。覚えていないココは反応に困った。
「多分、小松くんに自慢したかったんだと思う」
「なんの自慢ですか?」
「好きなひとがいるという自慢。結局は小松くんのことだけどね」
「・・・ぼくのことをぼくに自慢、ですか?」
「寝ぼけていたしね」
 記憶のないココは笑うしかなかった。
「小松くんが好きで好きで、嬉しかったんだ」
 話しながらココは不思議な気持ちになった。半年以上、告げようとしなかった気持ちがするりと咽から何度も出てくる。一言一言に想いをこめて小松に伝える。
「ぼくが本当に迷惑なら、ちゃんと言ってね」
 ココが言えば、助手席から「はい」と小さな返事があった。多少、間があったのは、考えたうえでの返事だと受け取っていい。無理はしない、無茶はしない、しかし絶対に引く気のないココにとって充分な返答だった。
「もし、小松くんがよければ休みに御節を食べにおいで。ぼくは出かける予定がないから、いつ来ても構わないよ。ダイヤモンドキャビアもまだ開けてないから」
「いえ、ぼくは」
 小松は返答を避けた。当然といえる。ココは「気がむいたら来て」と最後に沿えた。それ以外は言えなかったし、断られてもココは待つ気持ちを捨てられなかった。
 女々しい。それが己の真実だと、ココは腹を据えた。
 車から降りた小松がふいに空を仰いだ。
「雪?」
 つられてココも車から降りて空を見上げる。ささやかな雪だ。雪も雨も通り過ぎていくだけのものを、小松と一緒に過ごせるものなら大切に思える。
「帰りは気をつけてくださいね」
 雪を心配した小松がココに言う。
「ありがとう、小松くんもゆっくり休むんだよ?」
 小松の疲労を思いココがいえば、恨みがましい目をされた。小松を疲れさせた最大の要因は仕事でもパーティーでもなく、ココの告白であるのは明白だ。
(いくらでも待てる)
 ココの気持ちに嘘はない。
(眠れないほど意識してね)
 だが大人しく待つ気もなかった。
「今年もよろしく、小松くん」

終わり
次回6話編がラストになりますー。

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