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WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2024'09.21.Sat
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2011'02.13.Sun
腹黒・策略家をイメージしていたリーマンココさんなのに、最近では不憫さがアピールされます。やはり、ココさんはどうあってもココさんなのだな、と実感する今日この頃。
あんまりすったもんだしすぎると、私がなにか爆発してとんでもない展開になりそうです。

5-5/リーマンココマ

 小松から承諾をもらえて、ココの気持ちは一気に弾んだ。
「歓迎するよ。明日は初詣に行こう。グルメ神社の屋台は盛況だって聞くし、興味があるんだ」
 初詣の誘いに小松は喜んだ。小松を食べ物で釣ってばかりだが、餌にこだわっていられないとココは割り切る。
 ランチの時間を過ぎ、店に閉店の看板を下げた。ホールのテーブルとイスは移動させて立食しやすい配置にする。花屋が店内の装飾にとりかかる。日が暮れるとともに、落ち着いた色調の店内が華やいだ雰囲気に変わる。
 六時を境に本店はふたたびにぎやかになった。
 ココは何度かカウントダウンパーティーに参加したことがあるが、本店に近いせいか集まる顔ぶれがいつもと違う。会話が飛び交う場のはずなのに、皆、料理に手を伸ばし美味を堪能している。
 ホールを見渡すココにサニーが声をかけた。彼のとなりにいる妹のリンはドレスアップしてカフェとは違う活発さだ。
 久々に会う妹分にあいさつをして、ココはサニーを見やる。
「いつもならこの手のパーティーは来ないのに」
「会場が松のいる本店なら行くしかないし」
 自分の発言がココの怒りを誘うと知っていても口にするのがサニーだ。
「それに、ココが肩入れして、トリコが料理を絶賛して、おれがスカウトした料理人って知ってる奴なら来るし」
 サニーの言葉に、ココは微笑んだ。
「ぼくの肩入れは真実だけど、残りふたつの理由はうざいね」
 笑顔と台詞が合っていない。
「お兄ちゃん、うち、食べに行ってくるからね」
 料理(主にデザート)が気になるのか、リンは落ち着きがない。サニーは「一気に食べると消化に悪いからがつくなよ」と小言つきでリンを見送った。
「ところでトリコは?」
「さっきメールがあって、後、一軒店を潰してくるそうだ」
「腹ペコで来たら入店拒否だし」
「まったくだ。連日ハードワークな小松くんを最終日に過労で倒させる訳にはいかないからね」
 料理が尽きれば小松は作り続ける。元旦から三日間は店も休みなので余分な材料はないが、喜んで食べてもらうため、彼なら創意工夫を凝らして料理をする。とってつけた漢字がしないのが小松の凄いところだと、自分のお粗末な冷蔵庫から作り出した料理の数々を思い出してココは苦笑する。
「キモ! 思い出し笑いなんて美しくないし」
 サニーが大袈裟に身震いした。
「どーせ松のことでも思い出してたんだろ」
「わかる?」
 気負いもなくココはこたえた。
「聞くんじゃなかったし」
 サニーは後悔した。下がり気味のサニーの肩が一方向を見た瞬間にあがる。
「お、松だ」
 小松はまっすぐにココの元にいく。上司に言われた通りフォーマル姿を見て(今度見繕ってあげよう)とココが使命感に襲われた。
「地味すぎ」
 サニーが容赦なく小松に言った。
「存在が地味だから無理言わないでください」
 すかさず小松がつっこみ返した。
 サニーは近くの花瓶から、二種類小さな花を抜き取り小松の胸ポケットにさした。内側のポケットから櫛を出すと小松の短い髪を梳く。着替えた時に乱れたまま簡単に整えただけの髪型がきれいにまとまる。
「地味は地味なりに輝けるし」
 サニーは自分の仕事に満足した様子だ。
「花なんてぼくには似合いませんよ。ね? ココさん」
「かわいいよ」
 照れる姿が初々しいと思っているココに、「花はかわいいですけど」と小松は小さく言い返した。
「いや、小松くんが」
 ココが訂正すれば、小松は返事に困り、大きな口が中途半端に開いたり閉じかかったりした。
「松を困らせるんじゃないし」
 見かねてサニーが間に入る。小松は居た堪れなくなり「梅田事務局長にあいさつに行ってきます」と離れていった。
「おまえのせいで松が行ったし」
「サニーが話しかけた後に行ったんだから、おまえのせいだろ?」
 ココは堂々とサニーに言った。
 ふいに、葉巻樹特有の香りが店内に漂う。店は禁煙である。テーブルに並べられた料理に香りが移るのを避けるためだ。注意を促そうとしたが、近くにいた小松がその人物に声をかけた。
「ここは禁煙です。お煙草は我慢していただけませんか?」
 小松が話しかけた人物にココは見覚えがなかった。
「師匠、美食好きが集まってるこの会場で煙草は嫌がられますよ?」
 横にいる青年は、小松の友人の鉄平だった。彼が師匠と呼ぶ山賊風の男が与作である。
「嫌がられることを気にしては新しいものは生みだせん」
「セツ婆は食事中の煙草を嫌ってませんでしたか?」
 その一言で、彼は煙草を灰皿に押し込んだ。
「お元気そうで、与作さん」
「たまには地元に戻ってこいよ。親父さんも心配してるぞ」
 和やかに交わされる会話に鉄平も加わる。
「おれらと一緒に帰省すればいいじゃない」
 気安く誘う親しさにココは疎ましさを感じる。
「松と遊ぶ予定が」と言ってサニーが小松のもとに行った。自然に足を踏み出すサニーにココは息を呑んだ。
 頻繁に小松を誘いながらも、実際は彼に近づいていない自分にココは気づく。
 ココは小松の様子をずっと伺っていた。距離を計り、最良のタイミングで告白するつもりだ。だが、ここにきてココは危機感を覚えた。
(誰かがぼくより先に動いたら?)
 可能性は否定できない。考えるだけで寒気がして、ココは知らず腕をさすった。最悪の予想を思い浮かべず、小松と一緒にいる楽しさに油断した。ココの目の色がゆるやかに物騒なものへと変わった。
「小松―メシー」
 呑気なあいさつとともにトリコが現れる。みな、苦笑するが、トリコの食いしん坊ぶりを微笑ましく思っている雰囲気だ。名指しで呼ばれた小松も笑っている。ホール担当のスタッフらがトリコを見て少々青褪めたので、ココは仕事に没頭するため意識を切り変えた。

続く

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