2011'01.27.Thu
4話編は区切りが短いせいか、話数が多い割に展開が遅い・・・。
4-7/リーマンココマ
「店長が出張?」
副店長から聞かされた話に小松は驚く。話が急だったからだ。掛け持ちの責務を持つココは、店長に就いてから出張はなかった。
「急に行かないといけない仕事ができたといって」
昨夜遅くにココから連絡が入ったと副店長が言う。「しばらくかかる」と帰宅の日程は告げられなかった彼は、店長不在を心配した。ココが店長に就くまで不在だった本店を切り盛りしてきた彼だが、業績不振に陥ったことを気にしているのだ。
「クリスマス前には戻って来てほしいですね」
はあ、と彼はため息をついた。クリスマスという大がかりなイベントを控えた時期の不在は確かに不安があるだろう。
「一緒にがんばりましょう」としか小松は言えなかったし、乗り切ろうと気持ちを引き締める。料理に関しては、常に最高のものを提供するべく全力を尽くすだけだ。
だが、ココと気まずいまま会えなくなるのは辛い。
(避けられるほど、いやなことをしたのかな?)
出張が個人的事情で行われるものでないのはわかっているが、いやな考えは止まらなかった。終業報告はココが不在の間は代理の副店長にする。
三日、ココの存在を感じないだけで小松は落ち込んだ。職場の関係上、会えない日でも言葉は交わしていた。
せっかくの休みも気持ちが弾まない。来週からはクリスマス・デスなのに、気分転換もできなかった。
『おいしいものを食べると元気になるって本当だね』
ココの口からでた言葉は、小松の信条を認めたのと同じだった。
――おいしいものを食べれば元気になる。
何故、そう思ったのか小松は思い出せないが、食べてくれるひとに元気になってもらいたくて腕を奮い続けた。
小松は黒の肩掛けカバンを引っさげると、食べ歩きにでた。目的地はIGOが運営するカフェ部門の店だ。
「って、サニーさん?」
昼のピークが過ぎた店にサニーがいて小松は驚いた。
「なんだ、松は今日休み?」
サニーは黒のロングエプロンを外しながら小松にあいさつをする。白のシャツと黒いエプロンとデザインはいいが地味な色合いも、サニーの派手な雰囲気を際立たせる効果があった。
「ちょうどヨシ。おれも昼にするか」
サニーは小松の向かいの席に座ると、奥に向かって「リン、ランチふたつ」と声をかけた。彼のマイペースぶりに小松は苦笑する。
「おひさしぶりです。お元気でしたか?」
「いや、全然!」
サニーは景気よくこたえた。返事の内容と元気のよさに小松は耳を疑う。
「エステグルメの企画が最後の最後でダメになったし」
「通らなかったんですか?」
意外に思えて小松は聞き返した。人材の収集をはじめ、社内でも噂になっていると聞いたから、決定された企画だと思っていたのだ。
「コストが高すぎるって却下しやがった、あのオヤジ」
「コスト、ですか?」
小松はサニーに見せた企画書にあった食材を思い出す。確かに高価な食材ばかりだ。エステといえば高級感が溢れるから、「高そう」と思ってもその値段で通すものだと小松は思い、とくに気にかけていなかった。
「次は絶対通してみせるし」
企画がボツになっても、サニーは落ち込んではいなかった。小松は彼の前向きさに好感を持つ。
「がんばってください」
サニーを応援する言葉が自然と口にでた。
「おれの誘いを振ったくせに」
若干、サニーが意地悪い返しをすれば、小松は慌てた。その様子にサニーが笑う。嫌味のない笑みに小松は苦笑する。
「すみません」
小松は気後れなく謝罪ができた。
純粋に申し訳なく思い、それでも自分を譲らない意思を持つ大きな目を見てサニーはうなずく。
「不景気なツラしてたけど、元気になったならヨシ。ごはんにするぞ」
続く
「店長が出張?」
副店長から聞かされた話に小松は驚く。話が急だったからだ。掛け持ちの責務を持つココは、店長に就いてから出張はなかった。
「急に行かないといけない仕事ができたといって」
昨夜遅くにココから連絡が入ったと副店長が言う。「しばらくかかる」と帰宅の日程は告げられなかった彼は、店長不在を心配した。ココが店長に就くまで不在だった本店を切り盛りしてきた彼だが、業績不振に陥ったことを気にしているのだ。
「クリスマス前には戻って来てほしいですね」
はあ、と彼はため息をついた。クリスマスという大がかりなイベントを控えた時期の不在は確かに不安があるだろう。
「一緒にがんばりましょう」としか小松は言えなかったし、乗り切ろうと気持ちを引き締める。料理に関しては、常に最高のものを提供するべく全力を尽くすだけだ。
だが、ココと気まずいまま会えなくなるのは辛い。
(避けられるほど、いやなことをしたのかな?)
出張が個人的事情で行われるものでないのはわかっているが、いやな考えは止まらなかった。終業報告はココが不在の間は代理の副店長にする。
三日、ココの存在を感じないだけで小松は落ち込んだ。職場の関係上、会えない日でも言葉は交わしていた。
せっかくの休みも気持ちが弾まない。来週からはクリスマス・デスなのに、気分転換もできなかった。
『おいしいものを食べると元気になるって本当だね』
ココの口からでた言葉は、小松の信条を認めたのと同じだった。
――おいしいものを食べれば元気になる。
何故、そう思ったのか小松は思い出せないが、食べてくれるひとに元気になってもらいたくて腕を奮い続けた。
小松は黒の肩掛けカバンを引っさげると、食べ歩きにでた。目的地はIGOが運営するカフェ部門の店だ。
「って、サニーさん?」
昼のピークが過ぎた店にサニーがいて小松は驚いた。
「なんだ、松は今日休み?」
サニーは黒のロングエプロンを外しながら小松にあいさつをする。白のシャツと黒いエプロンとデザインはいいが地味な色合いも、サニーの派手な雰囲気を際立たせる効果があった。
「ちょうどヨシ。おれも昼にするか」
サニーは小松の向かいの席に座ると、奥に向かって「リン、ランチふたつ」と声をかけた。彼のマイペースぶりに小松は苦笑する。
「おひさしぶりです。お元気でしたか?」
「いや、全然!」
サニーは景気よくこたえた。返事の内容と元気のよさに小松は耳を疑う。
「エステグルメの企画が最後の最後でダメになったし」
「通らなかったんですか?」
意外に思えて小松は聞き返した。人材の収集をはじめ、社内でも噂になっていると聞いたから、決定された企画だと思っていたのだ。
「コストが高すぎるって却下しやがった、あのオヤジ」
「コスト、ですか?」
小松はサニーに見せた企画書にあった食材を思い出す。確かに高価な食材ばかりだ。エステといえば高級感が溢れるから、「高そう」と思ってもその値段で通すものだと小松は思い、とくに気にかけていなかった。
「次は絶対通してみせるし」
企画がボツになっても、サニーは落ち込んではいなかった。小松は彼の前向きさに好感を持つ。
「がんばってください」
サニーを応援する言葉が自然と口にでた。
「おれの誘いを振ったくせに」
若干、サニーが意地悪い返しをすれば、小松は慌てた。その様子にサニーが笑う。嫌味のない笑みに小松は苦笑する。
「すみません」
小松は気後れなく謝罪ができた。
純粋に申し訳なく思い、それでも自分を譲らない意思を持つ大きな目を見てサニーはうなずく。
「不景気なツラしてたけど、元気になったならヨシ。ごはんにするぞ」
続く
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