春に書いたSSなので今とは正反対の暖かさを羨ましく思います。
「不眠症」ココマ
「最近ちっとも眠れなくて」
はあ、とため息をつくココに、トリコはガラにもなく心配した。
四天王のなかでも長兄ポジションに位置するココは、基本誰にも弱味を見せない。そのココが深刻なため息をついているのだ。
「心配事でもあるのかよ?」とトリコが聞けば、ココはしばらく思い返していたようだが、最後には首を横に振った。
「ないよ」
気持ちの問題でないなら普通に病気かとトリコは考えるが、
「好きなひとならいるけど」
ココの発言に「恋の病」だという結論に辿りつく。
「でもひとり夜にベッドでいると、つい小松くんにいけないことを妄想してしまいそうで戦っているうちに朝になるんだ」
(帰りてー!)
ココの心配だけは今後するまいとトリコは誓った。
「暁を覚えず」ココマ
「最近、ベッドから起きられなくて」
朝は6時から起床していそうな昔馴染みの意外な発言に、トリコは「春だもんなー」と返した。トリコとて、空腹さえ覚えなければいつまでも寝ていたい陽気だ。
「そうじゃなくて小松くんが」とココが否定するので、何か他の理由があるのかと思って耳を傾けるが、
「ぼくのせいで起きられないなら、今後一切ココさんとこにお泊りしませんからいつでも言ってくださいね」
隈を浮かべる小松の壮絶な微笑みに、トリコは逃げ腰になる。
「そんな!」
「あ、アパートに来ても宿泊はお断りさせていただきます」
ふたりに関わるのを避けるためトリコは避難する。
春の陽気も肩をすくめる恋人たちである。
「眠れない夜のために」ココマ
トリコが高いびきをかき、小松が毛布に小さくくるまっているなか、ココは火の番と称して起きていた。
火などなくてもトリコとココがいる一行に襲いかかる猛獣はいないが、はじまりを告げたばかりの春の夜はまだ冷え込みが厳しく暖が必要だった。
小松が小さく丸まっているのを見てココは焚き火に薪をくべる。木の爆ぜる音が小さく響いた。
「ココさん?」と掠れた声がした。大きな目が半分ほど開いている。
「寝ないんですか?」
「寝るよ」
ココのこたえに偽りはない。ただ、小松の寝顔を眺めているうちに、「あと少しだけ」という気持ちが終わらず今に至る。
「寝不足はだめですよ・・・」
呟きの途中で小松は再び眠りに落ちた。ひとに注意しながら小松は、今回のハントのため本業でハードワークをこなしてきた。
疲労がたまったままハントに行くのと寝不足と、どちらがマシかと考える。
ココが眠るのはまだ時間がかかりそうだ。
終わり