お風呂deココマ
「い、いつから入ってましたか?」
「結構長い間かな? ぎゅうぎゅうと入っても起きないし。疲れが溜まっているね」
「疲れじゃなくて」
小松は二重三重に恥ずかしくなった。
ユニットバスは小松ならふたり、しかしココならひとりしか入れないサイズだ。小さいバスではないが、ココは少し大きすぎた。
よって、風呂はふたり別々に入る。
「柚子湯だよ」と風呂を用意してくれたココに感謝しつつ柑橘の香りのするバスルームに入ったが、いつの間にか小松は眠っていた。
ココが声をかけても、様子を伺いに風呂を覗いても、遊び心で狭いバスタブに入っても、小松は起きなかった。
「なんとか入れるね」
「身動きがとれません」
「窮屈?」
「窮屈というより・・・」
裸で密着することに小松は抵抗を感じた。肌を合わせるのは夜を過ごすときだ。背中を抱えられ、真正面を 向き合っていないだけ恥ずかしさは軽減されるが、起きたからには早く風呂を出ようと小松は思う。
「今度、温泉に行こうか?」
「いいですね」
「露天とかで、雪が降っていたら風情があっていいよね」
「あ、テンションあがってきた」
それなら今度の休みに、と、狭いバスタブのなか小松は振り返る。狭いため、完全に振り返ることができなくて苦しくなる。
「ぼくも休みを調整するね。それとぼくのテンションもあがってきたから、ちょっといい?」
まったくもって意味不明の台詞だったが、ココの手が小松の前を撫で回せば、意味はいやでも理解できた。
「ちょ、」
「かわいいいたずらで終わらせるから」
「いやいやいや、ココさんがかわいいいたずらで終わるはずがないでしょ?」
「期待してるならこたえるよ、全力で!」
浮かぶ柚子を手に取りココは微笑んだ。
お風呂場の攻防はすぐに勝敗は決する。柚子の香りが肌に染みて、小松に軽いトラウマを与えた。
終わり
大人しく終わるはずがない、ココさんが。