『福を引きました。』

福引って、なんでこうわくわくするんだろう。

福を引きました。

　年末のワールドキッチンは常に増して活気づく。
　ひとが多く、トリコひとりなら歩くのに問題ないが、隣を歩く小松はひとに揉まれながら前を進んで切る。
「早く帰ろうぜ」
　放っておけばいつまでもワールドキッチンを回りそうな小松にトリコが言う。この時期、いつもなら入荷しないレア食材が多く現れるのだと小松は言った。
（それくらい･･･）
　ハントで連れて行くし、欲しいといえば持ってくるとトリコは言いたかった。小松がそんな素振りを見せないから口にすることはないが。
　途中、十夢が福引の引き換え券をトリコたちに渡した。
「来年もひいきにな！」と念を押すのも忘れない。
　トリコはクジに興味なかったが、小松は行く気満々だった。
　クジのために並び（トリコ初体験）、くるくるとハンドルを回して玉を出し（当然初体験）、三等をあてた。
「もふもふスリッパ」
　食材が関わる場所で何故スリッパなのかトリコはわからなかったが、足のサイズが合わないので小松に譲った。
「やったー！　冬場の台所は寒いからあったかスリッパがちょうど欲しかったんです」
　小松は大喜びだった。
　唐突にトリコは、自分が引き当てたのはスリッパではなく福だと思った。
　退屈な福引会場に彩りを添える小松の笑顔がトリコには眩しく見える。

　ちなみに小松は一等のゴールデン米を当てて周囲をどよめかせたが、米はその日のうちにトリコの腹に消えた。

終わり
あのでっかい図体が町内会の福引交換所に現れて並んだらかわいいかなと思うの。