2011'01.18.Tue
早く、早くココマロマンスに突入したい・・・!
4-2/リーマンココマ
今日の店長怖いと、スタッフからのささやき声を聞きながら小松は開店前に現われた青年を思い出していた。小松を引き抜こうとしていたサニーを追い出したココは、玄関に塩を撒いて「営業の邪魔だ」と吐き捨てて後は見向きもしなかった。毒舌ではあるが、基本は面倒見がいい上司の変わり様に小松は驚き口が挟めなかった。
「あの・・・」と、会話の糸口が見つからないまま小松が声をかければ、「小松くんは知らないひととあいつについていったらダメだからね」とココが返した。取り付く島もないココの態度に小松の気持ちは引けるが、聞いた。
「あの方は何者ですか?」
自分が話題になっているのに、相手を知らない状況は居心地が悪い。
「カフェ部門で業績を上げた奴だよ。おおまかにくくればぼくとトリコの同期だ」
おおまかすぎて、結局は詳しい情報はもらえなかった小松である。サニーの発言は急すぎて、小松は考えることもできない。早シフトだったため早く帰る小松を、ココが心配げな視線で見送る。
(心配症だよな、ココさんって)
後ろ髪引かれる想いで小松は店をでた。一月前のココのオーバーワークを思い出した小松は、ココの心配ばかりしていた日々を思い返す。ある日を境にココは落ち着き、苦境を自分で乗り越え安定をみせた。凄いひとだと小松は尊敬する。自分が本店に移動してきたばかりの頃と比較して羨ましかった。料理長として他の料理人を動かす立場の小松は、ココの手腕を参考にするが、根本が違いすぎて勉強にならなかった。
完璧な上司であり、男だ。
(恋人がいないのは気のせいだったのかな?)
他人のゴシップに興味がない小松がココの周囲を気にするのは、最近になって「本命現れる?」という噂が社内でもちきりだからだ。彼の部屋に何度かあがった小松は、他人の影を部屋に見えず信じていなかった。
(恋人はいなくても、好きなひとがいるのかもしれない)
ココの看病をした日、寝ぼけた彼の口から「ぼくは、いるよ」と小松は聞いた。話の前後を考えれば、好きなひとの話だ。意識してココを見れば、彼の雰囲気が穏やかになったことに気づく。食事も睡眠もとっているから顔色もよく、笑顔も多い。
そのココが、珍しく怒気にはらむ表情を小松に見せた。サニーと言う男によって。
(サニーさん、か)
最初は和やかに毒舌を交わしていたココを思い出し、小松は首を捻った。
「そこの小松」
冬も深まり淋しい景色のなか、青年は世界が区切られたような鮮やかな色彩を放っていた。思わず小松は圧倒される。
「サニーさん?」
小松が振り返れば、サニーがにやりと笑う。
「私服だと高校生に見えないこともないから焦ったし」
軽くひとをばかにしているが、悪意がないせいか小松はいやな感じはしなかった。悪意というより、高揚する青年の雰囲気を感じる。
「もしかしてぼくを待っていたんですか?」
「社内や店で話そうものならココの邪魔が確実にはいるしな」
「すみません」と小松は、寒空のなか待っていたサニーに思わず謝った。
「気にするな、こっちもココに恨まれるのを覚悟でやってるし」
サニーは脇に停めてある赤い車を指差した。独特のフォルムの車体は高級ブランドの車で、小松とは無縁のはずだった。
「寒いし、どっかでご飯にするし」
暗に乗るよう促されたのだが、小松は初対面の人間といきなりふたりきりになるのも抵抗があった。帰り際、未来が視えたかのようなココの台詞も同時に思い出す。
――サニーについていったらダメだからね。
(・・・ごめんなさい、ココさん)
自分のことを知りたいという欲求の前に、小松は心のなかでココに謝罪してサニーの後についていった。
続く
今日の店長怖いと、スタッフからのささやき声を聞きながら小松は開店前に現われた青年を思い出していた。小松を引き抜こうとしていたサニーを追い出したココは、玄関に塩を撒いて「営業の邪魔だ」と吐き捨てて後は見向きもしなかった。毒舌ではあるが、基本は面倒見がいい上司の変わり様に小松は驚き口が挟めなかった。
「あの・・・」と、会話の糸口が見つからないまま小松が声をかければ、「小松くんは知らないひととあいつについていったらダメだからね」とココが返した。取り付く島もないココの態度に小松の気持ちは引けるが、聞いた。
「あの方は何者ですか?」
自分が話題になっているのに、相手を知らない状況は居心地が悪い。
「カフェ部門で業績を上げた奴だよ。おおまかにくくればぼくとトリコの同期だ」
おおまかすぎて、結局は詳しい情報はもらえなかった小松である。サニーの発言は急すぎて、小松は考えることもできない。早シフトだったため早く帰る小松を、ココが心配げな視線で見送る。
(心配症だよな、ココさんって)
後ろ髪引かれる想いで小松は店をでた。一月前のココのオーバーワークを思い出した小松は、ココの心配ばかりしていた日々を思い返す。ある日を境にココは落ち着き、苦境を自分で乗り越え安定をみせた。凄いひとだと小松は尊敬する。自分が本店に移動してきたばかりの頃と比較して羨ましかった。料理長として他の料理人を動かす立場の小松は、ココの手腕を参考にするが、根本が違いすぎて勉強にならなかった。
完璧な上司であり、男だ。
(恋人がいないのは気のせいだったのかな?)
他人のゴシップに興味がない小松がココの周囲を気にするのは、最近になって「本命現れる?」という噂が社内でもちきりだからだ。彼の部屋に何度かあがった小松は、他人の影を部屋に見えず信じていなかった。
(恋人はいなくても、好きなひとがいるのかもしれない)
ココの看病をした日、寝ぼけた彼の口から「ぼくは、いるよ」と小松は聞いた。話の前後を考えれば、好きなひとの話だ。意識してココを見れば、彼の雰囲気が穏やかになったことに気づく。食事も睡眠もとっているから顔色もよく、笑顔も多い。
そのココが、珍しく怒気にはらむ表情を小松に見せた。サニーと言う男によって。
(サニーさん、か)
最初は和やかに毒舌を交わしていたココを思い出し、小松は首を捻った。
「そこの小松」
冬も深まり淋しい景色のなか、青年は世界が区切られたような鮮やかな色彩を放っていた。思わず小松は圧倒される。
「サニーさん?」
小松が振り返れば、サニーがにやりと笑う。
「私服だと高校生に見えないこともないから焦ったし」
軽くひとをばかにしているが、悪意がないせいか小松はいやな感じはしなかった。悪意というより、高揚する青年の雰囲気を感じる。
「もしかしてぼくを待っていたんですか?」
「社内や店で話そうものならココの邪魔が確実にはいるしな」
「すみません」と小松は、寒空のなか待っていたサニーに思わず謝った。
「気にするな、こっちもココに恨まれるのを覚悟でやってるし」
サニーは脇に停めてある赤い車を指差した。独特のフォルムの車体は高級ブランドの車で、小松とは無縁のはずだった。
「寒いし、どっかでご飯にするし」
暗に乗るよう促されたのだが、小松は初対面の人間といきなりふたりきりになるのも抵抗があった。帰り際、未来が視えたかのようなココの台詞も同時に思い出す。
――サニーについていったらダメだからね。
(・・・ごめんなさい、ココさん)
自分のことを知りたいという欲求の前に、小松は心のなかでココに謝罪してサニーの後についていった。
続く
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