「一難二難三難」
久しぶりに三人でしたセックスは、予想通り小松くんが乱れた。後ろで愛されることに慣れた体は、前の刺激でイクだけでは物足りなくなっていた。ぼくとトリコの「お触り」で焦らされたぶん、欲求不満に陥っていた。
もともとぼくらとのセックスに照れはあっても隠し事をしない小松くんは、素直に啼いてくれるけど、「もっと」とか「いっぱいにして」とか、そんな睦言が聞けるとは思わずぼくらは大層はりきった。
嵐が去った後のベッドには、疲労困憊の小松くんと、腹の膨れた獣が2匹。
「大丈夫?」
さすがに申し訳なく思って、ナイトテーブルに置いた水差しから飲み物をコップに注いで小松くんに渡す。レモン、はちみつ、数々のハーブ。小松くんの咽と疲労を回復させるのを目的とした飲み物だ。
水分をとって一息ついた小松くんは、開口一番
「やりすぎです」
泣きすぎて赤くなった目で睨まれても、ごめん、怖くないし逆に・・・いや、やめておこう。
「なんだよ、よかったんだろ?」
トリコが小松くんの逆鱗に触れる。
「よすぎて死にそうでしたよ! 命は縮まりそうになるわ、それ以前にふたりが散々煽ったまま放置してくれたから、集中力を欠いて仕事で凡ミスばかりして散々でした!」
小松くんは怒っていた。・・・やはり放置プレイだと勘付かれたか。
「また足りないのか」とトリコがおもしろそうに言うので、小松くんは「今日はもうしません!」と返した。もともと終わるつもりだったぼくらに異論はない。
「了解。じゃ、風呂に入るか」
トリコが反省する素振りを見せないものだから、小松くんの怒りにぼくも組み込まれてしまった。
「風呂の前におふたりとも、ここに座ってください」
正座ですよ、正座。と念を押すから、お説教でもはじまるのかと思った。これ以上彼を怒らせても意味がないので、ふたりして大人しく正座する。
「じゃあ、トリコさんは左で、ココさんは右でぼくを指さしてください」
なんのおまじないか不明だったが、とりあえず言われた通り小松くんを指さす。小松くんはぼくとトリコの指を口にいれた。ぱくり、なんてかわいいものじゃない。見せつけるように舌を絡めて、挑発するようにぼくらを見ながら、音をたてて指をしゃぶる。
先の楽しみにとってあるソレはまだ実現していない。だから指だというのに、妙に意識してしまい困った。
「おい、小松、したいなら」
声が上擦るトリコを小松くんは否定した。
「今日はもうしません」
指を離すと今度は舐めだした。小松くんの口から顎にかけて、唾液が伝う。液体は紅い痕が散る胸元にまで流れ落ち、それに感じるのか舌先が震えた。
咥えて、欲情する、小松くん。唇が乾いて、無意識に舌で潤いを与えた。
「う、ん・・・」
小松くんはゆるくたちあがった自分のものを、あいてる手で慰めはじめた。最後の火種が小松くんに火をつかせる。飛び火する。たまらない。自慰をする小松くんから目が離せない。
イクとき、声はくぐもったが、指先から伝わる熱が全身を駆け巡る。
小松くんはぼくらの指を解放すると、拳にキスをした。
「お風呂をさきにいただきます。おふたりはどうぞごゆっくり処理をなさっててください」
欲情の残滓が宿る目で、茶目っ気たっぷりともいえる口振りで残酷に小松くんが言う。ぼくらは情けなくも悲鳴をあげた。
「ひとりでしろってか?!」
トリコが叫べば、
「ぼくもひとりでしましたよ!」
小松くんも叫んだ。ぼくらがお触りして煽ったのを、あたり前だけど恨まれた。調子に乗りすぎたと反省しても後の祭りだ。
やがて、風呂から水音が聞こえた。その音でぼくとトリコは現実に帰ってこれた。
「やられたー」
トリコが盛大にため息をつく。
「というか、やりすぎたね」
小松くんにまさか逆襲されるとは思わなかった。思わなかったけど、なんだか楽しい。
「今日はって言ってたけど、零時すぎれば明日になるぜ? 明日ならいいかな?」
トリコの前向きな精神をぼくも見習いたい。
「いいと願いたいけど、小松くんの体力がもつかな」
「あーふぐ鯨。なんでふぐ鯨は常に市場に出回らないんだ」
内臓の部分を言ってるらしい。滋養強壮にいいにはいいけど、それでぼくらとセックスし続けたら小松くんの体が壊れるぞ。
「まいったなー」
ぼやくトリコは楽しそうだ。実はぼくも楽しい。
たまにアクシデントもあるけれど、おおむねぼくたちの夜の営みは良好。
これにて終了!