矛盾とパラレルとあほな展開を笑って許せる方だけご覧いただけると安心します。
あ、ちょっとR18です。
料理陰陽師小松 其の五十七
小さな体に怒りをいっぱい表して小松はおれを責めた。
わかってる。どんな理由をつけたところで、おまえの同胞を喰らうことにはかわりない。
小松が嫌悪を抱いても仕方ない所業だ。
「ぼくはいやです。トリコさんが・・・」
小松は耐えるようにおれを見上げた。大きな目が涙で揺れている。
「他の誰かを食べるなんて」
だけど小松の目は、嫌悪とは違う感情を宿していた。
人間が妖怪を蔑むような目ではない。
「どうしても食べたいなら、ぼくを食べてください」
「ばか言うな!」
それができないから、おれはおまえの側にも寄れなかったんだ。
思わず怒鳴ると小松も言い返した。
「トリコさんならいいんです。トリコさんならぼくは怖くない。他の誰かを食べるくらいなら、ぼくを」
必死に言い募る小松の、昂ぶった感情が薫る。
すごくいい香り。
喉が鳴った。
味わいたいと思った瞬間、箍が外れる。
だめだと止める自分の声が、膜がかかったように聞こえなくなる。
手を伸ばして、確かめるように小松の柔らかな頬に触れた。怖いだろうに、小松はおれを見るのをやめない。
おれは小松の二の腕を掴むと地面に腰をおろした。目の高さが同じになった小松の頬を舐める。耳や、絞められた痣が残る首を舐めながら頭をさげる。
はだけられた着物から、心の臓がある胸が見えた。そこも舐める。舌で強く押せば、早鐘のような鼓動が伝わってきた。
忙しなく上下する肺のあたりも舐める。小さな尖りを舌にひっかければ、小松は「あ」と声をあげた。その反応がおもしろくてしつこくそこを苛めたら、泣くような掠れた声に変わった。
「た、食べるなら一思いにお願いします」
震える声で小松が言う。切実な響きに、小松を見あげれば、まっかな顔があった。
「おかしく、なります、から・・・」
その訴えに、おれはとっくにおまえにおかしくなっていると言いたかった。
続く