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WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2024'09.21.Sat
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2010'11.28.Sun

3話編ラスト・・・・そう、だけどまだまだ続くの・・・。


3-6/リーマンココマ

 すとん、と落ちるようにココは目が覚めた。急激な覚醒ではなく、なにかが落ちたような軽さだ。目を開けた瞬間に小松の寝顔が飛びこんできて、ココの心臓は止まりかけた。早鐘を打つ心臓とともに昨夜の記憶が甦る。
 記憶は曖昧だが、小松とベッドをともにして抱きしめるだけで終わっていたのだから、自分がいかに昨夜眠たかったのかを思い知らされる。
 はじめて小松がココのマンションに泊まった際に、一緒のベッドで眠ったせいか変な刷りこみが彼に入ったのは幸運としか言いようがない。
(小松くんと出会えた以上の幸運なんてないけど)
 好意ははじめからあった。奪いたいほどの衝動を抱えてきた。それでも、改めて感じる好意は今までとは違った気持ちでココを満たす。
 いとしさに迷いはない。
(どんな未来があろうと、手に入れてみせる)
 小松との未来を占おうとしていた自分がココは馬鹿馬鹿しくなる。腹が決まっているなら道標を確認する意味はない。
 相手の呼吸を読み、目線を追い、口元の変化にさえも神経を注ぎ込む。想像するだけでココは興奮してきた。その、獰猛な衝動を抑える楽しさにココは嗤う。
 ココは身体を起こし、小松の首筋の後ろ側に顔を寄せた。髪の生え際に唇を寄せて強く吸う。痛みに小松の体が揺れた。意識が戻らないながらも小松は首に手をあてた。小さくうなった後に目を覚ます小松を、ココは見守る。
「おはよう、小松くん」
 一日のはじまりが幸福とともにココのもとに訪れた。
「おはようございます、ココさん」
 寝ぼけ眼の小松に、いい笑顔でうなずきながらもココは不埒な思いを抱くのであった。
 小松が作った朝食を食べてココは満足だった。
「おいしいものを食べると元気になるって本当だよね」
 ココは弾む声で小松に言う。
「毎食小松くんのごはんが食べられるなら、絶対に食事を忘れることはないのに」
「トリコさんと似たようなことを言いますね」
 小松は苦笑する。
「あいつは食べ忘れないよ?」
「いえ、逆に食べ続けるって言ってました」
(あの底なしめ)
 忌々しげにココは内心毒づく。
(依頼書を偽造して一ヶ月は帰れないハントに出て行かせるか)
 ココの思考が偽造書類を皮切りに、次々と仕事で埋め尽くされる。最近の資料は特に念入りに調べていたため暗記するほどだった。検証しなければ、資料を集めなければいけないと思っていた件について、ビジョンが呼吸のように流れてきた。
(あれ?)
 占いに違和感がない。今まで信用できずにいた占いが、当たり前のように信じる気持ちが伴った。
(スランプから抜け出せたか)
 なにが原因で占えなかったのか結局は原因不明だったが、ココは気持ちを切り替え、自分の能力を信じた。
「今日の小松くんはお休だったよね? 駅まで一緒に行こう」
「ココさんは本社勤務の日でしたよね」
 小松は唸ると、ココに提案した。
「晩ご飯を一緒に食べましょう。おいしいものをいっぱい作りますよ」
 小松の提案の意図がわからず、ココは首を傾げた。
「約束したら、ココさんはすっぽかすひとではないですよね?」
 小松は満面の笑みで言った。自分のアイディアを褒めているのだろう。
「小松くんが食事を用意してくれるなら、幹部会議もすっぽかすよ」
 嬉しくてココが本音を口にすれば、小松はすかさずつっこんだ。
「会議はさぼらないでください」
 もっともだとココは声をあげて笑った。

「ガララワニのハントかー、移動に時間がかかりそうだなー」
 トリコはココの執務室で依頼書を見ながらぼやいた。
「食べたがっていたからいいじゃないか」
 ココはなにくわぬ顔で言う。呪いがきいた訳ではないがトリコはハントのためしばらく本社を留守にする。
「ところで人並みに生活できているみたいだな」
 急にトリコが話を変える。
「おかげさまで」
「血色もいい。ちゃんと食べているみたいじゃないか」
「まあね、小松くんに叱られたし」
 占いも順調に進み、今まで滞っていた仕事も片付きココは絶好調だった。
「喜んでるんじゃねーよ、気持ち悪い」
 トリコは盛大に呆れた。
「晩飯でもどうだ。うまい店を見つけたんだ」
「あいにくと今日は先約がある」
 ハントから帰ってきたら付き合うと、続けようとした矢先、
「誰と?」
 トリコは素朴な疑問を口にした。下世話というより、誰かと約束をするココが珍しかったからだ。
「先約と濁したんだ。察しろ」
 野暮な奴、と付け足すことも忘れない。
「へー」と、トリコも遠回しな表現に納得する。ただ、相手が誰かまではわからなかった。
「また今度な」
 トリコは必要以上に食い下がらなかったが、ここで適当に納得したせいか、考えなしに「ココにもついにデートする相手ができたか」と社内で呟き、彼の発言は恐ろしいスピードで社員の口に広がった。
 定時とともに退社するココの足取りの軽さが、噂に信憑性を与えたという。

終わり
副題jは「恋する丼」・・・。
まだまだ続きます。
 

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