忍者ブログ

TCK

WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2024'11.23.Sat
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2009'03.25.Wed
「Home cooking」の頃に比べると進展した関係な感じです。
時間軸は常にばらばらですが。

「試作品」

 たまに小松はとんでもない料理を作る。

「種の分量の関係もあるからミニのサイズだとイメージがつきにくいですよね。その点、トリコさんならホールで食べてもらえるから助かります。味の意見も聞けるし」
 味の意見と言うより、できた料理を食べつくしてほしいといった感じだ。
 以前なら試作品なんて食べさせてくれなかった。料理人として、完成品しか出さなかった昔を思えば、ずいぶんとくだけて嬉しいじゃないか、こんちくしょう! 味見で申し訳ありませんが、という前振りできた話をおれが断る訳がない!
 現在、小松が試行錯誤しているのはキッシュだ。ランチのワンプレートメニューのメインにしたいと言っている。
 小松の部屋の狭いテーブルに、冷えたワインと熱々のキッシュが並ぶ。
 オーブンは家庭サイズだが、生地は型ですでに空焼きがしてあり、おれが食べる間に次の分の種を型に流して焼く。暖房はいれてなくてもキッチンはあたたかい。夏だったら暑さにやられていただろう。

 卵と生クリームとチーズの種に、小松はアイディアをおりまぜる。
 クリーム松茸と青菜は定番だ。魚介類と豆類いも類も普通だ。しかし次第に不思議なものに替わっていく。
 カレー味、すきやき風、おじや風、キムチ風(料理雑誌にキムチとチーズのオーブン焼きを見て挑戦したと言っていた)かぼちゃスイーツ風、エトセトラ。あげくに、この組み合わせでやるのか? とおれを驚かせるのが多数でてきておもしろかった。
 味は・・・新鮮なものばかりだ。試作品ならではだな。
 このなかからメニューが決まるかもしれないし、全部が無駄になるかもしれない。
 ここからまた新しいアイディアが浮かぶかもしれない。
 すべてきっかけにすぎないかもしれない。
 まだ開発途中の料理たち。これらは全部小松の結晶だ。他の奴には食べさせてやるものか。
 全部だ。
 例えそれが失敗作でも、料理だけじゃない、笑顔や、声や、喜びも悲しみも。全部おれは味わいたい。
 フルコースのごちそうでも、ハントでもなく、小松と一緒にいて、奴にとっての日常の料理におれがいる。一緒に味見できるのは幸せだ。
 うん、最高に気分がよくって、勢いあまって小松に襲いかかりそうだ。
「味見ばかりで申し訳ありません。トリコさんの希望のものを作りたいと思います」
 小松は冷蔵庫にある食材を告げる。計画性のない料理は、料理人にとって喜ばしいものじゃないのはわかっている。
 あれが食べたいといえば、この材料はないのでと却下される。メニューを決めるのもひと苦労だけど楽しい。

 そんな休日をおれたちは過ごす。

終わり

PR
[124] [123] [122] [121] [118] [117] [116] [115] [114] [113] [111
«  BackHOME : Next »
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
WEB拍手
つなビィ
カウンター
バーコード

TCK wrote all articles.
Powered by Ninja.blog * TemplateDesign by TMP  

忍者ブログ[PR]