二日遅れでアップというのも間抜けですが!
後悔なんて、する暇もくれないあなた
トリコさんの自宅に行けば、居間の片隅に置かれたダンボール箱に手紙が溢れているのが見えた。
「ファンレターですか?」
「いや、営業の一環だ」
素っ気ない声が興味のなさを語っている。
営業といっても、封筒は華やかでとても業務的とは思えない。
どこの会社からだろう?
トリコさんは有名人だから大変だろう。
ふと、封筒の文字に目がいく。
「ハッピーバースディ?」
「毎年、この時期になると大量に食えないもの寄こされるから嫌になるぜ」
「じゃないでしょ!」
驚愕の事実にぼくはテンパった。
トリコさんのばーすでぃ?
「い、い、い、いつです?」
「美食屋活動してからずっとだ」
いつからバースディカードがきたのか聞いているんじゃない。
本当にどうでもいいのか、トリコさんはろくにぼくの言葉を聞いてなかった。
「トリコさんのお誕生日はいつですか?」
間違われないようにはっきり聞く。
「おとつい。25日月曜日」
聞き間違いであってほしい・・・。
おとついといえば、水曜日が休みなのでスイーツハウスに遊びに行くと電話した日だ。
トリコさんはなにも言わなかった。
トリコさんなら「誕生日だから」といってなにかねだってくると心のどこかで思っていた。
油断してはいけないと覚えておこう。
腹立たしいけど、まずはこれだけは言わないと!
「誕生日おめでとうございます」
「おう、ありがとな」
なんだかトリコさんのテンションは低い。
「来年は一緒にお祝いしましょう」
「来年?」
「来年ははりきりますよ。なんでもリクエストして下さい」
料理の話をしているのに、トリコさんは何故か血走った目でぼくを見た。
「なんでもリクエストしていいのか?」
「来年ですよ?」
内緒にしていた意趣返しのつもりで来年を強調していえば、トリコさんは唸った。
「前払いならぬ前祝いってありだと思わねえ?」
なんとも変化球を投げてくれた。
トリコさんの真剣な顔にほだされてうなずく。とたん、トリコさんの笑顔が輝いた。
誕生日当日にサプライズして喜ばせたかった気持ちもあるけど、これはこれで、誕生日のお祝いだよね。
「じゃあ早速」
トリコさんはぼくを肩にかついで二階の寝室へむかう。
「トリコさん?」
「アレやってみるかな。いや、まだ早いかもしれねえ。となるとこの前手に入れた実の効果を使って・・・」
ぼくの疑問にこたえてくれないトリコさんは、真剣になにか考えている。
知的で素敵だなんて、この先の展開を想像すればときめけない!
「料理の話ですからね!」
「おう、小松をおいしく料理するって話だろ? いや、おまえはいつでもおいしいけどよ、たまには醤油じゃなくてソースとか」
いろいろ言いいながらトリコさんは寝室の扉を開く。
そしてバタンと閉まる音にぼくの血の気が引いたのは言うまでもない。
終わり
また暗転でごめんなさい!!