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基本的にトリコさんはぼくを対等に扱ってくれている。
…多分。
言葉にして確認をしたことはないから不明だけど、ハントの際ぼくのために妥協はしない。ぼくはそれが嬉しくて、トリコさんについて行くため歯を食い縛り遅れないよう後を追う。
たまに足を滑らせて崖から落ちそうになったり、猛獣に襲われそうになったりするけど、本気でヤバイときはトリコさんが助けてくれた。
そして苔に足をとられて猛獣の住処である洞穴に落ちそうになったぼくを、トリコさんは片手で引っつかんで支える。体の半分が穴に落ちそうな恰好だ。トリコさんが物騒な猛獣の名前を告げて、落ちてたら一瞬で骨になってたぜ、と言うから「脅かさないでください」とぼくは返した。
けど、いつまでたってもトリコさんはぼくを引っ張り上げなかった。握られた腕に力が加わっていく。強く握られたぐらいで痛いというのが恥ずかしくて我慢していたけど、骨がきしみそうになって危機感を感じた。
「手を!」離して欲しくて叫べば、トリコさんはようやくぼくを引っ張り地面におろした。握られた腕の部分は赤くなっている。
「悪い、ちょっと考え事をしていたら…」
まさかのっぴきならない事態が起きようとしているのか?!
大きな体が小さく見えるぐらい反省するトリコさんに、「大丈夫ですから」と言った。
「まずいのかなぁ、おれ」
なにか悩んでいる様子に、ここしばらく感じていた違和感に納得してしまった。
トリコさんはなにを悩んでいるのだろう? ぼくは彼の力になれるのかな?
放したくないって思ったら、自然と身体が動いてた
word by 確かに恋だった「恋に気づかない彼のセリフ」