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WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2024'11.23.Sat
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2008'12.12.Fri
そのひとを出会う前から知っている。

【関係には共通性がある】

 料理人のなかには「美食屋」を蔑む者もいる。高級食材を(それは即ち危険生物を意味する)手にいれられても、料理は素人レベルだと。
 どこかで聞いた噂だが、小松は彼らのように「美食屋」をばかにする気はない。料理人は調理のプロだが食材調達のプロでないように、美食屋は調達のプロであって調理の専門家ではない。それだけの違いだ。
 高級食材を手にしたことのない料理人のひがみだと口の悪い者なら言うだろう。
 料理人が美食屋に会う機会は多くない。マネージメントが関わる取引では、ホテル、レストランのマネージャーが仕切るからだ。
 料理人と美食屋。関わりはあるようで、ない。まして、まだ駆け出しシェフの小松には、美食屋が必要となる食材を手がけるのは夢のまた夢だ。
 だが若者らしく夢を見る。
  いつか、美食屋を通してしか手に入らない食材で料理をしたいと。

 数年後、彼の夢は命の危険にさらされながらも叶えられる。

【共通の友人】

 新しい出会いなど料理関係において誰かの紹介がない限りない。異性が相手なら合コン。しかし生活のリズムが一般人とは違う料理関係の人間は、遊びたい盛りの女の子から敬遠される。
  小松はホテルでだされる食材の調達のため美食屋四天王のトリコと出会って以来、多くの出会い(デンジャラス率が高いのは平凡に生きてきた彼にとって予想外なものだったが)があった。
 美食屋四天王随一と謳われるトリコと出会ったのは奇跡的だが、まさか彼を通じて美食屋「ココ」と知り会えたのは、小松自身も驚いた。
 トリコもココも標準装備で口が悪く、ココは占いを生業としているせいか大人しめな外見に比べて口数も多い。
 気を利かせるのが得意ではない小松だが、話しかけてくるココに対して話題を返せるのは、偏に共通の友人であるトリコネタがあるからだ。
 小松にとってトリコも付き合いはじめて長くはないが、毎度濃い捕獲の旅をしているせいか話題は尽きない。トリコと古い友人であるココは、もっと多くのネタを持っている。

 友人を通して生まれた新しい友人の、孤独を知るのはまだ先の話だ。

【心に共通するものはない】


 優男とトリコが称するココは、静かな口調、穏やかな微笑む男だ。トリコの表現は間違ってはいない。占いがココにいろんなものを見せるのが憂いの原因かと小松は思った。本当は毒の体を持つ身に負い目を感じているようだ。だがその毒はココにとって武器だ。蔑むものではない。未知なる力に小松とて脅威を感じるが、商売道具を怖がられては、包丁を持つ料理人など犯罪者と呼ばれても仕方ない世の中になるというもの。
 怖くても、恐怖をプラスに変換できる度量が小松にはあった。
(でなければ、安全な厨房を出て命の危険にさらされる美食屋との捕獲旅に出る訳がない)
「やけに小松を気にかけるじゃないか」
 トリコの声が洞窟内で響く。風の流れのせいで小松の耳にココの返事は聞こえなかったが、好意的な返事があったように思えた。
 好意的な感情をもらえるのは嬉しい。正直、ただの料理人の自分が美食屋四天王と行動を共にできることがずっと不思議だ。
 共通するものといえば「おいしいもの」に対する飽くなき欲求。
 人間性でいえば平凡の部類に入ると自負する小松は、ココが自分を気にかける理由がみあたらない。

 「美食屋と料理人は決定的に違う。最高の食材を手に入れたいのと、最高の料理をひとに提供する差は大きいとぼくは思う」

 ストイックとも取れるココの意見に、「美食屋」も「料理人」も友人なら関係ないと小松が言い返す日は近い?

終わり

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