矛盾とパラレルとあほな展開を笑って許せる方だけご覧いただけると安心します。
料理陰陽師小松 其の六十二
小松くんの料理をする姿は神聖だ。
小松くんから死相が消えた夜、ぼくらは彼の手料理に舌鼓を打った。
こうして小松くんの料理を囲んでみんなで食事をするのははじめてかもしれない。
人間が食べる料理で満たされるなんて思ってもみなかった。きっと小松くんだからだろう。
ぱちぱちと薪が爆ぜる音を聞きながら片付けをする小松くんを見る。
片付けを手伝いたかったが、病人扱いされて小松くんのとなりにはサニーがいる。
トリコも同じく、酒を飲みながら小松くんの料理を食べている。
「おれんとこに小松のねぐらが準備できるまで預けておくからな」
トリコが言う。こんなふうに信用されては、うなづくしかない。悔しい。
「それにしても、おれの食の衝動ってどこへいったんだろ?」
トリコは心あたりがないようで首を捻った。
「小松が一緒にいられる嬉しさでどっかいったんだろうな」
だが深く考えないあたりが呑気だ。人間に美食山の鬼大将と恐れられる妖怪には見えない。
「憶測だけど・・・」
多少、強引な心あたりはあった。
「命を喰らうのがおまえの食の衝動だ。おまえ、小松くんと交わったろ? それか人間と妖怪、陰と陽が交わった結果か。小松くんの陰陽師の能力が関わっているのか、単に想いを遂げられたから他に欲求がいかなくなったか」
「ふーん」
ぼくの解説をトリコは話半分で返事した。
「どうでもいいか。小松が側にいるなら」
こいつの脳天気振りが羨ましい。食の衝動に苦しんでいるこいつを見捨てておけばよかったと本気で後悔した。
「おまえ、今なんか怖いこと考えてないか?」
「別に」
ぼくも適当に言い返す。トリコは納得できていない様子だったけど、それ以上のつっこみはなかった。
「釜戸作ったり、料理の道具や器も用意したいな」
「食料庫や保存食も冬に備えて準備したいですね」
小松くんが話に加わる。
「お正月はごちそうを用意しますね」
小松くんが未来を語る。そのなかにはトリコはもちろんのこと、ぼくやサニーも含まれている。
淡々とした日々に不満はなかったけど、もう小松くんのいない日々は考えられない。
続く
次回ラスト!