それにしもて終わらない・・・。
料理陰陽師小松 其の三十八
「松!」
疾走する虹色の狐が、ぼくの前に止まると同時に白銀の髪をなびかせる妖怪の姿へと変わった。
「無事でよかったし!」
力いっぱい抱きついてくるので、当然ながら受け止めきれずぼくは尻もちをつく。
「ご心配をおかけしました。それよりトリコさんを」
「あいつは負けないし」
ぼくの心配を、トリコさんの心配だとサニーさんは思った。そうだけど、それだけじゃない。
お師さまと争って欲しくない。
それに・・・
「トリコさんの気が・・・」
拳を繰りだすごとに変貌していく。
頭上のふたつの角は太くなり、耳はさらにとがり、肌は乾いた血の色になっていく。凶暴さを剥きだしにした牙。
あれはトリコさんの本性だろうか?
「やばいし」
舌打ちのようなサニーさんの言葉が聞こえた。
「松は冗談抜きで隠れてる方がいい」と言って黒蝶を呼んだ。
「リン、松を安全な場所へ」
「待ってください、トリコさんをさきに助ける方が」
とっさにでたぼくの言葉に、サニーさんは怪訝な顔をした。
「トリコが負けると思ってるのか?」
「違います。でもトリコさんは苦しんでます」
荒々しく、凶暴な気だけど、魂を引き裂かれるほどの苦しみをトリコさんから感じる。
助けたい。
例え力になれなくても。
ぼくは懐から札を取り出して叫んだ。
「式神ふぐ鯨!」
ぽん、とまりのような式神が表われる。トリコさんとお師さまにむかってふぐ鯨を飛ばした。
「重圧解放、ふぐ鯨!」
解放を唱えると、トリコさんとお師さまの間に飛んだふぐ鯨が巨大化した。
ふぐ鯨はトリコさんの拳によって弾かれる。
術を返された痛みに、ぼくは膝を突いた。
続く