2010'05.21.Fri
小松が乙女に・・・。
3/時を駆ける小松
摩訶不思議な現象に悩み、ぼくはココさんに相談した。
「ぼくって超能力者だと思います?」
ココさんなら電磁波でなにかわかるかと思って期待したけど駄目だった。
「変わり者だと思うけど超能力者じゃないよ」
ココさんはあっさりと切り返し、
「またなんで急にそんなことを聞くの?」
「夢見がおかしかったので、もしかしたらって考えてみたんですけど」
「あいかわらずと突拍子がないね」
ココさんはふわりと笑う。ガラスの内側で世界に絶望していた少年とは違う笑みだ。夢だとわかっていても、ココさんの未来に笑顔があると思えば安堵できる。
過去に干渉できればいいのに。そうしたらトリコさんたちを全力で助けたい!
「・・・ところで無香料のシャンプーで本当に無香料なのって知りませんか?」
「嘘の無香料ってなに?」
ぼくの質問にココさんは盛大に呆れて次に笑った。あの時の少年はあの頃、笑うことができただろうか?
「なにがあったか知らないけど、相談ならのるからひとりで抱えちゃだめだよ?」
ひとりで抱えこむのはココさんたちだと思ったけど、返す言葉がうまく見つからなかった。
自然派の石鹸を教えてもらい、グルメフォーチュンを後にする。
しばらくたって、夢を見る法則に気づいた。それはトリコさんと寝ている時だ。ひとりアパートで眠る時は夢を見ない。トリコさんの近くにいると夢が見やすいのだろうか?
夢を見る回数が片手では足りなくなる頃、疲れて眠りに落ちる直前、トリコさんの髪がいまだ洗剤で洗っているのに気づいて聞いた。
「石鹸があるじゃないですか」
石鹸で髪を洗うのもありだと聞き、シャンプーよりも香りが少ないかと思いトリコさんにプレゼントしたけど、使われた形跡がない。
「今のが使い終わったら使うぜ」
トリコさんも眠たげな声だ。
「トリコさんはぼくの子供の頃の夢を見ます?」
ぼくがトリコさんの子供時代の夢を見るなら、逆もありかと思って聞いてみた。
「おれ、夢見ねえし」
そういうタイプか。
「でも腕の中におまえがいて、夢の中にもおまえがいるってのはいいな」
トリコさんはぼくの心臓のあたりに額をあてる。最近のトリコさんのお気に入りの体勢だ。トリコさんの頭を抱えられる姿勢はぼくも嬉しい。
ぼくの腕のなかで眠る男がいとしかった。
夢でも助けたいと思う。
「大丈夫ですか?」
夢のトリコさんは怪我をしていた。右手の拳が赤く血塗られている。流れる血をそのままに肉の塊を食べるトリコさんは、ちっとも食事を楽しんでいないみたいで哀しくなる。
大きなテーブル。たったひとりの食事。傷ついたトリコさん。
なにがなんでも力になりたいと思うのは当然じゃないか。
ぼくはトリコさんの横に立った。
『前も、いたよな?』
トリコさんが怪訝な顔をする。
夢なのに前回を引きずるなんて変わっている。実はトリコさんと一緒に寝る影響でトリコさんの記憶を垣間見ている可能性も考えていた。
『誰だ?』
夢なんだから誰だと言われてもへこむな。
「小松です、トリコさん」
今さら自己紹介なんて気恥ずかしい。
「こ、まつ」
すぐ側の声で目が覚める。トリコさんの寝言のようだ。寝言なんて珍しい。眠っていてもぼくのことを考えているならこんなに嬉しいことはない。
「ぼくはここにいますよ」
起こさないようそっと、頭の天辺にキスをした。食器用洗剤の香りはこの際、目を瞑ろう。
続く
摩訶不思議な現象に悩み、ぼくはココさんに相談した。
「ぼくって超能力者だと思います?」
ココさんなら電磁波でなにかわかるかと思って期待したけど駄目だった。
「変わり者だと思うけど超能力者じゃないよ」
ココさんはあっさりと切り返し、
「またなんで急にそんなことを聞くの?」
「夢見がおかしかったので、もしかしたらって考えてみたんですけど」
「あいかわらずと突拍子がないね」
ココさんはふわりと笑う。ガラスの内側で世界に絶望していた少年とは違う笑みだ。夢だとわかっていても、ココさんの未来に笑顔があると思えば安堵できる。
過去に干渉できればいいのに。そうしたらトリコさんたちを全力で助けたい!
「・・・ところで無香料のシャンプーで本当に無香料なのって知りませんか?」
「嘘の無香料ってなに?」
ぼくの質問にココさんは盛大に呆れて次に笑った。あの時の少年はあの頃、笑うことができただろうか?
「なにがあったか知らないけど、相談ならのるからひとりで抱えちゃだめだよ?」
ひとりで抱えこむのはココさんたちだと思ったけど、返す言葉がうまく見つからなかった。
自然派の石鹸を教えてもらい、グルメフォーチュンを後にする。
しばらくたって、夢を見る法則に気づいた。それはトリコさんと寝ている時だ。ひとりアパートで眠る時は夢を見ない。トリコさんの近くにいると夢が見やすいのだろうか?
夢を見る回数が片手では足りなくなる頃、疲れて眠りに落ちる直前、トリコさんの髪がいまだ洗剤で洗っているのに気づいて聞いた。
「石鹸があるじゃないですか」
石鹸で髪を洗うのもありだと聞き、シャンプーよりも香りが少ないかと思いトリコさんにプレゼントしたけど、使われた形跡がない。
「今のが使い終わったら使うぜ」
トリコさんも眠たげな声だ。
「トリコさんはぼくの子供の頃の夢を見ます?」
ぼくがトリコさんの子供時代の夢を見るなら、逆もありかと思って聞いてみた。
「おれ、夢見ねえし」
そういうタイプか。
「でも腕の中におまえがいて、夢の中にもおまえがいるってのはいいな」
トリコさんはぼくの心臓のあたりに額をあてる。最近のトリコさんのお気に入りの体勢だ。トリコさんの頭を抱えられる姿勢はぼくも嬉しい。
ぼくの腕のなかで眠る男がいとしかった。
夢でも助けたいと思う。
「大丈夫ですか?」
夢のトリコさんは怪我をしていた。右手の拳が赤く血塗られている。流れる血をそのままに肉の塊を食べるトリコさんは、ちっとも食事を楽しんでいないみたいで哀しくなる。
大きなテーブル。たったひとりの食事。傷ついたトリコさん。
なにがなんでも力になりたいと思うのは当然じゃないか。
ぼくはトリコさんの横に立った。
『前も、いたよな?』
トリコさんが怪訝な顔をする。
夢なのに前回を引きずるなんて変わっている。実はトリコさんと一緒に寝る影響でトリコさんの記憶を垣間見ている可能性も考えていた。
『誰だ?』
夢なんだから誰だと言われてもへこむな。
「小松です、トリコさん」
今さら自己紹介なんて気恥ずかしい。
「こ、まつ」
すぐ側の声で目が覚める。トリコさんの寝言のようだ。寝言なんて珍しい。眠っていてもぼくのことを考えているならこんなに嬉しいことはない。
「ぼくはここにいますよ」
起こさないようそっと、頭の天辺にキスをした。食器用洗剤の香りはこの際、目を瞑ろう。
続く
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