料理陰陽師小松 其の四十五
ココさんの崖の家から出ていたぼくは、外で地震に遭遇した。
大きい揺れでなくてよかったと思う。
「おーい、松ー、無事かー」
サニーさんが様子を見に来てくれた。
手にはどこかで見覚えのある動物を持っている。
あれって・・・
「こいつ、おまえに用があるって言うけど知ってる?」
サニーさんに首ねっこを掴まれて暴れるむささびは、黒い眼鏡をかけている。
こんな変わった風貌の動物、いや式神を持つひとはひとりしか知らない。
「梅田さまの式神のヨハネスさん?」
『小松くん、探しましたよ』
ヨハネスさんはいっそう激しく暴れた。サニーさん、一体どうやってヨハネスさんを捕まえたんですか?
「離してあげてください」
お願いします、と頼めば、ぼくを見下ろすサニーさんは、
「松の頼みなら仕方ないし」とヨハネスさんを離してくれた。
「どうしました? 梅田さまになにかありましたか?」
『至急、美食山から離れるようにと伝言です』
最近の天変地異を美食山のせいにされているらしい。
近々、何人か送り込まれるとヨハネスさんが教えてくれた。トリコさんたちを滅するために。
美食山の北方には何十年か前封印された妖怪もいる。
人間は彼らを恐れている。
「近々っていつですか?」
問い詰めれば、ヨハネスさんは「明日」とこたえた。
話を横で聞いていたサニーさんも驚く。
『早く離れてください。危険を承知で私をきみのもとに送った梅田さまの好意を無駄にしてはいけません』
そういって、伝言の役目を果たした式神は消えた。
「・・・サニーさん」
ぼくも覚悟を決めないといけない。ぼくの呼びかけにサニーさんは息を呑んだ。
「お茶の用意を!」
「ええー?!」
続く