料理陰陽師小松 其の五十一
ゼブラの封印石に亀裂が入っているというので、ココが松に様子を見てほしいと頼んだ。
もちろんおれも一緒に行く。
トリコは東方にこもったままだ。今も食の衝動に苦しんでいる。
松が元仲間を追い払って数日が過ぎたが、このままでは終わらないだろう。
平穏なうちにゼブラの様子を見てもらいたい考えと、松が塞ぎこまぬよう外へだすココの気遣いを感じた。
「大きい岩ですねぇ」
松が見上げた。見上げる際、十歩ほど下がったのが笑えた。
「石の亀裂に意味はありません。封印が劣化したとか、誰かが力技で解こうとした形跡も感じられません。ですが、ここ最近誰か陰陽師が来た気配が残ってますね」
松の言葉におれたちは驚く。
美食山に人間が入ってきて、おれの感知能力、ココの視覚、トリコの嗅覚が見逃すはずはない。
おれたちに痕跡を感じさせないほどの実力者か?
『お兄ちゃん、ハゲ、来た』
黒蝶のリンが現れる。
ハゲ?
「ハゲ鷹?」
『違う、ハゲ』
さっぱりわからないし!
『人間、強そう』
人間と聞き、思い浮かべたのは松の仲間の可能性だ。
「リン、おれたちが様子見てくるって、トリコに伝えろ」
今のあいつには人間の匂いは残酷なだけだ。
「キッス」とココが口笛で相棒を呼ぶ。
鴉が「クワァ」と鳴いてココの腕に舞い降りた。
「小松くんを安全な場所へ」
「ぼくも行きます」
松が力強い目で言った。
しかし、とためらうココに、引く気はない松は「お願いします」と頭を下げる。
「多分、ぼくそのひとを知ってます」
「ハゲ?」
「はい、ハゲサ・・・じゃなくてマンサムさまです」
続く