矛盾とパラレルとあほな展開を笑って許せる方だけご覧いただけると安心します。
WJよ読む前にまずは更新! 早いもので50話です。
料理陰陽師小松 其の五十
好きか、というココの問いは「酒が好きか」と同列ではないことぐらいおれにもわかった。
小松が好き?
もちろん好きだ、食い殺したくないと鬼のおれが怯えるほどに。
おれの周りには大切な仲間か敵しか存在しなかった。
おれにとって小松は大切で、だけどココやサニー、ゼブラといった仲間への情となにか違う。
人間だからか?
考えると、食の衝動が沸きあがって落ち着かなくなる。
「ぼくは小松くんが好きだ」
ココの言葉に胃がむかむかする。
「小松くんには幸せであってほしいし、平和であってほしい。小松くんの悲しむ顔なんて見たくないし、泣いていたら元気づけたい」
放っておけがいつまでも語るんじゃないかと思わせる口振りだ。
「小松くんは、トリコと会えないのを気にしている。早く食の衝動を治められないのか?」
「人間を食べないと治まらないのはおまえだって知ってるだろ」
「だから、だ」
思いつめるココの表情が、無言で訴える。
「人間を、食べろってか?」
ためらう理由はない、今までのおれなら。
「小松くんにばれないようにすればいい」
ためらう理由は小松だけだ。あいつに知られたくない。あいつと同属の人間を食べるおれを。
「あいつを騙して話がおさまるくらいなら最初っから悩んでねえよ」
とっとと人間を食って、何食わぬ顔であいつの前にでるくらいのあつかましさはおれにだってある。
できないのは、あいつに嘘をつきたくないからだ。
嘘をつくことで、あいつに嫌われたくなかった。
それだけだ。
あいつを失うことを、おれはなにより恐れている。
続く