女の子の成長を祝う日につき。
「なんでわからねえんだ? 週明けの平日だぜ? クリスマスもだめ、バレンタインもだめとくれば、この日ばかりはおれらを優先して休みをとるのが恋人だろ!」
「ホワイトデーならともかく、わかる訳ないじゃないですか! 三月三日が何の日か知ってますか? ひな祭りですよ? 女の子の成長をお祝いする日であって、どこをどう解釈しても恋人同士のイベントにはなりません!」
ヒートアップするトリコと小松に、ココは頭を抱えたくなった。トリコの言い分はめちゃくちゃだが、トリコだからと考えれば斜め45度の思考も読み取れる。ようするに、イベントにかこつけて小松と一緒にいたいのだ。それに対する小松の返事は常識的で、トリコの言い分がおかしいと認めざる得ない。
三月三日にとある家のひな祭りパーティーに出張シェフとして腕を振るう小松は、まさかそんな落とし穴が待っているとは思わず、ちらし寿司と春をイメージしたケーキや料理のアイディアを美食屋ふたりに相談をした。その際に三日が休みではないのが発覚して今の騒ぎだ。
「・・わかりました、トリコさん、三月三日の夜はがんばってお休みをとります。ちらし寿司ぷれいもがんばるので、三日を丸一日付き合えないのを許してください!」
「ちらし寿司ぷれいか、うまそうだな」
食べ物を含んだ小松の懇願にトリコの思考がもっていかれる。占わなくてもココにはわかった。トリコはなにも考えてないのだと。
(トリコが単純でよかったね、小松くん)
「ちらし寿司ぷれいってなにをするんだ?」
「そ、それは・・・当日までの秘密です!」
今回ばかりはトリコに同意できないココは、暖かくふたりのやりとりを見守るのだった。
訳のわからないまま終わる