バレンタインネタです。
バレンタインネタを考えているせいか無性にチョコが食べたくなります。
チョコレイトディズ
「2月14日に休めとは言わねえ。だから15日は休みをとれよ小松」
「む、無理です。15日って日曜日ですよ? 14日から15日にかけてカップルの宿泊も多いから休めません。しかも宿泊したカップルには「幸せ朝メニュー」が企画されていて、デザートはなんとバラ二ブの実! 恋愛の縁起をかついだ食材をふんだんに使ったメニューで朝食とはいえ予約だけでも大人気です」
「うまそうだな、それ」
「でしょう?」
「トリコ、話がごまかされてるぞ」
ココの冷静な指摘にトリコのテンションが一気に下がる。誤魔化されなかったと、小松も肩を落とした。
「すみません、休めません」
小松が腹を決めて謝る。
「だから小松くんが謝ることじゃない。仕事だから気にしないで」
ココが小松をフォローする。ふたりの横でトリコが「うーうー」子どものように唸り続ける。
「・・・わかった」
納得の一言を、小松はこれほどまでに不気味に思ったことはない。基本「食いしん坊ちゃん」のトリコは我慢をしない。あれとこれ、どちらが食べたい? と聞けば「両方に決まってるだろ!」と実力行使で両方を手に取る男だ。
「2月15日までが忙しいんだな? 16日は休みが取れるんだな? ということは15日の夜はしっかり付き合ってくれるって意味だな?」
矢継ぎ早の質問に、小松は首を縦に振る。
「わかった。小松の仕事の事情は目を瞑る。だからおれのお願いも聞いてくれるよな?」
お願いと言うより脅しに近い前振りだったが、交換条件で納得してもらえる方が精神的に気が楽に思えて小松は再び首を縦に振った。ココが頭を抱えている姿が目に入っていたら、小松も返事に躊躇したが、あいにくと目の前のトリコをなだめる方に頭がいっぱいだった。
「・・・だ」
「はい?」
トリコの声が聞き取れず、小松は聞き返した。
「ちょこれいとぷれいだ!」
拳を握って訴えるトリコの言葉を、理解したくないと本気で思う小松だった。
「あほですか? あほですよね? あほだと言ってください。冗談だって納得しますから」
「おれは本気だ!」
「いやです、溶けたチョコレートなんて熱いだけです!」
「チョコレートの泉のチョコは常温で溶けた状態だ」
「シーツが汚れます!」
「チョコじゃなくても汚すだろうが!」
「あっちは洗えば落ちます!」
小松がまっかな顔で言い返した。
「ココさん、助けてください」と普段小松はココに助けを求めないが、
「トリコの案に賛成だから小松くんを助けられない」
常識人である彼も人並みに男だった。おまけに毒気まで顔にでるぐらいのハイテンションぶりだ。
「ぼ、ぼくは食べ物で遊ぶ真似は絶対にいやです!」
「「全部食べるから問題ない」」
ふたりはきれいに声を揃える。
幸せなはずのイベントが、何故こんなにも不安と危険要素がふんだんに盛り込まれるのかわからず小松は冷や汗を流す。
チョコレートの泉へいく手筈やシーツもプレゼントした方がいいとか、シーツの下にビニールシートを敷けばマットは無事とか、ふたりは小松を置き去りにしていろいろ相談している。
甘い一夜まで、後何日?
終わり