甘い飴をみて、思った・・・。
口のなかで愛を溶かす
遠くを見ていたココが、ふいに「例えば小松くんがさ・・・」と脈絡もなしに呟けば、トリコの精神は無意識にガードを高める。
「小松くんが飴なら、さぞおいしいだろうなぁ」
ココの妄想に、来たるべき衝撃に心の準備をしていたトリコの肌に鳥肌が加速して覆う。
(ごめん、ごめんなさい、許してください)
トリコは心のなかで何故かあやまり、衝撃をやりすごそうとする。
波と同じでいずれはひいていくものだ。
時間にして数瞬、しかし、おそろしほど長く感じた。その間、深呼吸を3回ほどしてトリコは自分を落ち着けた。
ココの発言はマインドコントロールの強化訓練と化している。
妄想を口にすればココの気はすむのだから発言につっこみはしない。
(それにしても)とトリコは思う。
毎度毎度ココの突飛な発言はトリコの心臓に打撃を与える。インパクトのある発言をしながら、肝心のココはというと、小松に対して普通だ。
決して「飴だったらな」なんてどん引きする妄想は口にしない。
常識を考えてだと最初トリコは思ったが、ココの小松への態度を見ていると、単に意気地がないだけだというこたえに辿りつく。
「小松が好きなのか?」というトリコの問いにココは「まさかトリコも小松くん狙いか?」と敵意を剥きだしにされて以来、関わりたくなかった。
(このヘタレめ)
この一言ですべてを片付けたくないが、トリコは思い込んだ。
「小松を食べちゃいたいなんて言うようになったなー」
ちょっとは気持ちが前進したのかと思いトリコが呟けば、ココはまっかになった。
「そんな下心がある訳じゃないからな」
ココが必死にいい訳をはじめた。聞き苦しくてトリコは適当に相槌を打つ。
(嘘つきめ)
心のなかで暴言が顔を覗かせた。
(面倒くせえからさっさと小松を甘く溶かせばいいのに)
ヤケクソ気味に呟きトリコは、我に返って小松にちょっと謝った。
終わり
小松を飴のように大切に舐めるココさんが書きたかっただけですが・・・。