11/時を駆ける小松
『まさか毎年それを言うために夜這いしてたのか?』
「夜這いじゃありません、誤解を招くような言い方はやめてください!」
自分の声が他に聞こえないのをいいことに、ぼくも大声で返す。
『夜這いじゃなければなんだ?』
なんだ、と堂々と聞かれて言葉につまった。
「あいさつです」
苦しい言い訳だけど、ぼくにとってあいさつとしか言い様のない行為だ。
『おまえ何者だよ? 幽霊か?』
今頃になって聞かれるとは思わなかったぼくは、再び言葉につまった。
「自分でもわかりません」
自分が存在する時代に戻れないぼくだ。どのタイミングで目覚めるのか自分でもわからない。今はトリコさんがいる島を離れる気はないけど、彼が世界に飛びたった後はどうすればいいのか悩みどころだ。
思った以上に不安を感じないのは、時間の感覚がないせいかもしれない。故に実感が沸かない。眠るぼくは今、どうしているのだろうか? 寝たきりかな?
『これからもおれにとり憑くつもりか?』
「いいえ」
ぼくは迷わずにこたえた。
「いずれ世界中を飛び回るあなたに、ついていく術などありません」
『おれが連れていってやるって言ったら?』
「ぼくみたいな無神経な幽霊を同行させたら大事なハントも失敗しますよ」
茶化して言えば、トリコさんは難しい顔になった。
「前に、トリコさんに嫌な思いをさせてごめんなさい」
逃げるように去ってから、ちゃんと謝っていないことに気づいたぼくは気になって仕方なかった。
『なにが?』
昔すぎて忘れているようだ。
「ぼくはあなたの事情を考慮せず、バトルコロシアムで闘うのを非難していました。自分勝手だったと反省してます」
『・・・まさか、それをずっと気にしておれの前に現われなかったのか?』
トリコさんは言葉を選ぶように慎重に、ゆっくりと聞いた。
「はい」とぼくが告げるとトリコさんは『なんてこった!』とオーバーアクションで叫び、隣室のサニーさんからは「やかましい」と怒鳴られた。
「ごめんなさい」
聞こえないとわかっているが反射的にこたえた。
『サニーじゃなくておれに謝れ』
「あ、はい、傷つけてごめんなさい」
『じゃなくて!』
違うの?
『今まで会いに来なくてごめんなさい、だろ』
・・・その謝罪の方が違うと否定したい!
続く