料理陰陽師小松 其の四十一
「松、ひどいし!」
トリコに向かって蚊の鳴くような声で言った言葉はおれの耳にも届いた。
「な、な、なにがです?」
呆然としていた松が驚いて飛び起きる。顔が赤くて目が潤んでいるのは・・・びっくりしたせいか?
「確かにトリコにはマジびびるけど、松が拒むとは思わなかったし」
トリコは確かに、傷ついた。松に拒まれて。
「拒む?」
「触るなって言ったし」
「触るなって・・・ぼくトリコさんを拒んでません!」
全力で否定する松におれはのけぞりながらも聞き返す。
「なら触るなってトリコに言った意味がわかんないし。トリコが怖かったから触るなって言ったのと違う?」
「怖くありません、そうじゃなくて、そうじゃなくて」
わーとかきゃーとか叫びながら松はしゃがみこむと、式神のまるっこいのを呼び出して顔を隠した。
いや、式神って顔隠しに使うんじゃないし?
「サニー」と後ろから肩を叩かれる。
「小松くんにあんまり突っ込むんないよ? ぼくがトリコに殺意を持つから」
「はあ? まるで松がトリコを好きみたいな言い方だし?」
なにげなく言った台詞に、ココは笑っていない笑顔のまま「毒地獄」と呟き、毒気が溢れた。
至近距離の強力な毒に死ぬかと思った。
運よく、松はしゃがんでいて顔に式神をあてていたおかげで毒からは免れ、おれもとっさに口元を抑えたから体が痺れたのと、自慢の着物がくすむ程度ですんだが、上空あたりにいた妖怪たちは軒並み逃げたり落下したりと、偶然が故意かわからないココの毒のおかげで敵地のど真ん中でありながらも敵はいなくなった。
ただひとりを除き。
続く