「マジで食する5秒前」 トリコマ
汗を流してから調理にかかりたいというので、自宅(スイーツハウス)の風呂場を小松に貸した。
衛生的でないのは料理人として気になるようだ。
リビングでそこらへんのものをつまみながらソファでくつろぐ。
静かな家でシャワーの音が響いた。
おれじゃない奴がたてた音だ。
自分以外の人間がいる証。
この家でおれがシャワーの音を聞くなんて・・・。
「すっげーいやらしく聞こえるんだけど?」
「夢な話」 トリコマ
階下から漂う匂いに意識が覚醒していく。
スイーツハウスは食べられる家だから常に食べ物の匂いに溢れている。だが脂の弾ける音や出汁の香りなんてしないはずだ。
誰かいるのかとキッチンにむかえば、顔なじみのシェフがいた。
「やーっと起きましたか。朝ごはんがもうすぐできます。顔を洗ってきてくださいね」
小松が振り返って言う。テーブルには朝食にしては豪勢なラインナップだ。
我が家で作りたての朝飯が用意されるなんてはじめてかもしれない。
「うまそう」手を伸ばして黄金色の卵焼きをつまむ。
「だから、ちゃんと顔を洗ってからにしてください」
小松の叱る声も気持ちよかった。
朝から豪勢な食事、それを作ったのが小松だなんて夢みたいだ。
「夢だったけどな」
「そんなオチだと思った」
ココをびっくりさせようともったいぶった言い方をしたが一刀両断される。
この夢、いつか本当にできねえかな?
「削る日常」 トリコマ
「命を削りながら生きているんだと思う」
自分でも緊張していると感じる声で小松に話しかければ、「はあ?」となんとも気合の入っていない返事をされた。構わずおれは話をすすめる。
「生きるのが寿命を消費させながらだとしたら、おれが今おまえに話をしているのも、おまえが料理を作っているのも、命を使ってだと思う」
おれが言わんとすることは小松も察しているようだが、意味まではわからないようで話のまとめを待っている。
ここが見せ場だ!
「同じ命を削るなら、おまえの日々をくれ」
決死の思いで告げれば、小松は話に続きがあるのかと思っているのか待っている。
焦れたおれは叫んだ
「プロポーズしてんだよ!」
「逆ギレですか?!」
見当違いの小松のつっこみは、おれの精神を削りまくった。
ちなみにシャワーの音でむらむらするトリコさんがお気に入り!