トリコマを書いているといつもお腹が減ります。
突撃☆晩ごはん
夕食時に小松のアパートへ行けば、当然のことながら驚かれた。
小松が今日休みで、予定もないからたまにはのんびり家で晩ごはん食べますと、昨日電話した時に聞いていた。
おれを見た小松は、一人暮らし用の小さな炊飯器の蓋をあけ、コンロにかかった鍋の中身を確認して、冷蔵庫をあけた。
考えれば自分ちの食料在庫事情などわかるものなのに、わざわざ確認するあたり小松の動揺が伺える。
「飯をたかりにきた訳じゃねえ。晩飯のトレードだ」
おれはグルメ亭が一日十個と限定販売している弁当を差し出した。
小松も知っている弁当のようで、とたんに目を輝かせる。
「食べてみたかったんです!」
小松の受け取ろうとした手は、一瞬の躊躇ののち下げられた。
「このお弁当とぼくの晩ご飯じゃトリコさんの割が合いません」
「合うから寄こせ」
おれは小松に弁当を押しつける。
小松が自分のために作る料理は質素だ。高級な食材も、派手な味付けもない。
おれが普段食べているのは「料理人小松」の料理だ。
悪くはない、当然好き。でも、以前小松の冷蔵庫を漁って(勝手に)食べた(後で大層叱られた)常備料理や昨晩の残りものもうまかった。おれが味わったことのない味だ。
おれが小松の料理を食べたいといえば、あいつはシェフの腕をふるう。だから迷惑とわかりつつも連絡もなしに押しかけたのだ。
「おいしいですね」と弁当を頬張る小松に「おまえの料理の方がうまい」と正直に言えば「またまた!」返される。
キャベツと豚肉を炒めただけの料理がこんなにもうまいんだからこいつは凄い。
「今度は連絡してから来て下さいね、いっぱい作りますよ。この前思いついたレシピもあるのでそれもぜひ」
帰る際におれに言った小松の台詞は魅力的だ。素のこいつの料理も、料理人としての料理も最高だから選ぶのは究極の選択になる。
「どうやったらあいつの料理をもっとたくさん食べられると思う?」
「料理に関してトリコが思案する日が来るとは思わなかった」
マジな顔してココが言うのだから、おれは否定した。
「おれ今、料理じゃなくて小松の話をしてるんだけど?」
ココが返事をしないこと数秒。いきなり立ち上がるとキッスを呼んだ。
「キッス、トリコを小松くんのアパートまで捨ててきてくれるかな? 一緒について行けなくてごめん。トリコといるのは苦痛だから」
さわやかな笑顔でココが言うと、キッスは一声鳴いておれを背中に無理やり乗っけた。
「突撃するのは晩ごはんじゃなくて小松くんにしろ。遠回りな行動は迷惑だ」
なんかアドバイスをしてくれているらしい。よくわからないが受け止めよう。
謎なのは「小松くんに無理矢理な突撃だけはするなよ」という最後の一言だった。
ココの言葉はたまに解読不能だ。
終わり