YES、節分!
ロールケーキ
平日のランチピークも過ぎ、片付けと同時にディナーの仕込を始めた厨房に四天王ココが現れる。
厨房内は一瞬騒然とするものの、彼が誰を目的で訪れたか知るスタッフはすぐに作業に戻った。
「どうしました、ココさん?」
レストラングルメの料理長がココの元へ行く。
「小松くんにあげようと思ってお菓子を作ったんだ」
ココははにかみながら言った。
ここで「お菓子を作ったからお裾分け」といわないあたりがココの小松へのオープンっぷりが伺える。
当の小松はお菓子と聞いて喜んでいる。
「ロールケーキなんだけど」と言ってココは紙袋から細長い包みを取り出した。
「最近コンビニでまるかぶりロールケーキってあるじゃない? 今日は節分だし、まるかぶり太巻きじゃなくてまるかぶりロールケーキってのもおもしろいかなって思って」
もじもじと話すココに、小松は遊び心があるなぁ、と呑気にも考えていた。
ケーキを片手で持つと折れそうななので、台に置いて包みを開ける。スポンジはココアだ。
「この赤黒い筋はなんですか?」
生地に浮かぶマーブル模様を指して小松は聞く。
「ベリーベリーの粉末を練りこんだんだ。苦味のなかにベリーの酸味もいいかなって思って」
「なるほど」
「生クリームはとろり牛から絞ったもので。の、濃厚というか・・・濃いというか、もしかしたらくどい、ぐらいかもしれないから生地はあっさり風味で」
「おいしそうですね」
四天王が作ったケーキに小松は目を輝かせる。
「じゃあ早速みんなで・・・」
「いいえ、料理長、我々はケーキではなくお米が食べたいので結構です!」
スタッフは声を揃えて辞退した。
「休憩に行ってください、料理長。天気も良いから外でランチも」
「ばか、外はまずいだろ」
「人目につかないところがいいよな」
「ホテルの部屋は急には取れないから・・・奥の個室はどうだ、今日は予約はなかったよな?」
そうしよう、そうしようとスタッフらから賛同があがる。
「あのー?」
「料理長の賄い準備オッケーです!」
「料理長、ココさまを個室にご案内を!」
「あ、はいよ!」
自分の賄いのトレーを受け取り、小松は反射的にうなづいた。
「ありがとう、きみたちの未来は安泰だよ」
ココがさわやかな笑顔で礼を言った。
状況が牽制でなければ、同性だろうと彼らも見惚れるほどの笑みだ。
小松とココが移動すると、厨房からは盛大なため息がこぼれた。
「おれ、節分嫌いになりそう」
「泣くな。悪いのは節分じゃない、あからさまな四天王とあからさまなアピールに気づかない料理長がいけないんだ」
「呪いを回避できただけでも良しとしようぜ」
「おいしい、小松くん?」
「ふぁい」
終・・・