矛盾とパラレルとあほな展開を笑って許せる方だけご覧いただけると安心します。
新刊の製本もできた、荷物もまとめた、お洋服の準備もできた(前日にすべてをやろうとするとテンパるので)
久々にSSの更新だ!!!
料理陰陽師小松 其の十六
「しばらく見ないから死んだものと思ったが、生きてたんだ」
背中にかかる声は悪意に満ちていて、気分はよくない。
知った声に無視する訳にはいかず振り返れば、以前ぼくと組んだ仲間がいた。
左の袖から包帯が見える。妖怪の瘴気にあてられて療養中の身だ。
表に出られるくらいには良くなったのかもしれない。
彼の怪我は、ぼくを庇ってできたものだ。
彼はぼくを恨んでいる。仕方ない。
「おかげさまで」なんて不自然な返答をする自分がいやだった。
「ひとりで美食會に乗り込んだんだってな? 無理するなよ、ひとりじゃ的になるだけだぜ?」
言われなくても自分の非力振りはよく知っている。
だから強くなりたかった。
「もっと徹底的に禊(みそぎ)をしろよ。妖気が残っていけねえや」
妖気に反応して傷が疼くと言って、文句を言いながら彼は去った。
妖気。
陰陽師ならぼくに残った妖気に気づいてもおかしくない。
美食山を降りたら妖気を祓うようにしてるけど、祓いきれてないなら危険だ。
危険を冒してでも彼らに会いたいなんて、おかしい。
対峙しただけで彼らの強さは伝わってくる。
強い。
きっとぼくなど瞬殺ものだ。
でも彼らは怖くない。
それが不思議だった。
むやみに人間を襲わない妖怪たちだ。
彼らが人間に悪さをしてるのは見たことがない。
だから、悪い妖怪じゃないから、滅さなくてもいいんだ。
それが彼らといる理由でもいいよね?
続く