2009'05.21.Thu
矛盾とパラレルとあほな展開を笑って許せる方だけご覧いただけると安心します。
料理陰陽師小松 其の十七
深夜、ふいに呼ばれた気がして目が覚めた。
懐かしい感じがする。
ぼくは寝間着のまま外へでた。
道の曲がり角で黒い髪が見えた。長い髪が揺れて消えた。ぼくは後を追う。
曲がり角に辿りつけば、その先の角を曲がる後ろ髪が見えた。
後を追う。
見覚えのある感覚に期待して胸が震えそうだ。
ぼくは夢中で走った。
都から離れた場所で足を止めるそのひとに向かって叫ぶ。
「お師さま」
ぼくが小さかったときに別れたきりだけど、後ろ姿だろうと見間違えるはずがない。
そのひとは振り返った。
顔は面で隠れて見えない。
「久しいな、小松」
面でくぐもった声でも、よく知っている。
ぼくは十年ぶりかわからないほど遠い昔に離れたお師さまにしがみついた。
「会いたかったです、お師さま」
「私は会うつもりはなかった。おまえとは相容れない存在だからな」
「・・・子供だったころは気づきませんでしたが、お師さまは妖怪・・・ですよね?」
スタージュンと、不思議な響きのする名前を、昔はなんの疑問も思わなかった。
でも陰陽師の修行をするようになってから、徐々に思うようになった。
ぼくを育ててくれたひとは妖怪だったのではないかと。
「おまえの察する通りだ。おまえの能力は予想以上のものだ」
「だからぼくを遠ざけたのですか?」
「そうだ」と、お師さまは言った。
お師さまと暮らす毎日は楽しかった。
トリコさんたちを怖いと思わないのは、お師さまと過ごした日々があるからだと思う。
「では今、ぼくと会ってくださる理由とは?」
続く
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