いよいよ第二章! 嗚呼波乱万丈!を目指します。
料理陰陽師小松 其の十五
才能があると言われてぼくは喜んだ。
飢饉で両親を失い孤児になったぼくを、養ってくれた料理のお師さまに料理を認めれられるのが嬉しかった。
数年後、能力があると言われた。
おまえにはもっと違う世界があるといってお師さまは、ぼくを遠くへ追いやった。
泣いて、泣いて、屍になりそうなぼくを、拾ってくれたのがウーメン梅田さまだ。
「小松ちゃん、いいかしら」
低い声を高い音域で話す口調は独特で、呪文に関しては陰陽師のなかでも一、二を争う。
一説には突飛な恰好に妖怪がびびった隙をついて、と噂があるが、真偽は定かではない。
「怪我の具合はどう?」
「もう大丈夫です」
「二度とひとりで無茶してはだめよ?」
母親というのがどういう存在かわからないけど、梅田さまは忘れかけているひとを思い出させる。
男のひとだけど。
「ですが、ぼくと一緒に組むひとの危険が大きいです」
「その危険を差し引いてでも、小松ちゃんの能力は凄いんだけどねえ」
梅田さまはため息を吐いた。
正直、ぼくは自分の能力がいまいち理解できなかった。
料理をする動作で魔を鎮めるなんて聞いたことがない。
しかも魔を鎮めるための所作(料理)をする間、完璧にぼくは無防備になり狙われ放題だ。
行動をともにする仲間はぼくを庇い大怪我を負った。
これならひとりの方が気兼ねなくていいと思って都を荒らす美食會のもとに乗りこんだが。
結果は半死半生だった。
式神の助けを借りて逃げたけど、都より美食山が近いからといって彼の住む山に行ったのは自分でも不思議だった。
美食山の青い髪の鬼大将は元気だろうか? お酒ばかり呑んでいるかな?
黒髪の鴉天狗に落雁を持っていく約束をしたけれど。
虹色の髪をもつ妖狐に香油を頼まれたけど。
ぼくは彼らを好きだけど、彼らはなんでぼくを受け入れてくれるのかな?
彼らが都を荒らす妖怪でなくてよかったと、ぼくは本気で思っていた。
だって、彼らを滅ぼせない。
ぼくは陰陽師失格だ。
いつかお師さまに捨てられたように、また放り出されるかもしれない。
続く