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「ハニージンジャーカモミール」ココマ
「なんの呪文?」
小松が口にした単語の連発に、ココは不思議そうに聞き返した。すべて知っているが、繋げると意味合いが違って聞こえる。
「どちらかふたつなら、有りな組み合わせですが、みっつになるとちょっと個性的なんですよね」
「その個性的な飲み物をぼくに?」
白いマグカップから立ち昇る湯気を見つつココは聞いた。
「接客業で、この時期、風邪を持ち込んでくるお客さんもいますよね?」
おまけに、ココの場合常に喋るのが仕事だ。
「予防のお薬だと思って飲んでください」
だされたお茶を無下にするつもりはないココだが、勧められて改めて、気持ちが暖かくなる。
薬、というと研究所にいた頃の苦い思い出が甦るが、小松が口にする「薬」は優しい。
(きみが一番の薬だ)と口にするかわりにココは呪文みたいな飲み物を飲む。
味は、小松のように個性的だったとつけ加えておこう。
「ホットチョコレートプリーズ」トリコマ
「小松ーメシー、ビールー」
元気に小松のアパートに押しかけたトリコの願いは叶わなかった。
「残念ですがトリコさん・・・」
玄関に出てきた小松は、赤い顔で言った。
「すでにぼくはできあがっているので料理はできません」
「まっぴるまから飲むなよ!」
「トリコさんに言われたくありません!」
お休みなんだし、用事は片付けた後なんで飲んでもいいじゃないですか、と強気な小松は確かに酔っぱらっていた。こうなると、トリコは冷静になるしかない。
「勝手に食べるぜ」
「アルコールが抜けるまで待ってもらえれば、なにか作りますよ?」と、小松が言うのでトリコは食料の買出しに行こうとした。まっぴるまから酔っぱらいを外に連れださない良識はトリコにもあった。
「じゃあ、まあお茶でも」と、再び寒空に出ようとするトリコに、小松が温かい飲み物を用意した。
コーヒーでも紅茶でもなく、それはお茶というよりお菓子よりの飲み物だった。
「何故にホットチョコレート?」
「だってトリコさん、好きじゃないですか、チョコレート」と無邪気にいうからトリコは胸がときめいて仕方なかった。
普段「あなたのためだ」なんて言わない青年の、酔いに任せた素の言葉はトリコを喜ばせる。
「サンキュー」といえば「どういたしまして」と返ってくる。
ホットチョコレートはいつもより甘く感じた。
「サニー100%」サニーと松
「ジュースは果汁100%だし」と断言するサニーは、自販機で売られているような炭酸飲料は決して飲まない。リンが「お兄ちゃんは人生の9割損をしている」と兄を評して論争が勃発する。
基本が水(エアアクア)で、添加物が入っている飲み物は口にしない。
グルメケースの技術が発達して品質保持のレベルが高くなっているおかげで味や質の保存に困らないが、生まれた時代が悪ければ飲み物ひとつも苦労しただろう。
もっとも、サニーは美に対する工夫や苦労は厭わない。時代が悪ければ自分で対処する強引な前向きさがあった。
サニーは困らないが、彼がアパートに来たとき小松は困った。サニーを満足させられる飲み物がない。
「美食茶をどうぞ」
困ったときの美食茶を用意する。水道水ではなくペットボトルの水を沸かし、カップを温めてできる限りの準備をしたおかげでサニーが満足する結果になった。
こうして小松のピンチを、新年会のビンゴゲームの景品が救った。