冷たくもホット
業務用パック1リットルのアイスクリームをトリコは頬張る。
大型クーラーボックスにはまだ何種類も入っているのにせっかちな食べっぷりを、ココは「品がない」と冷たい目で見やった。
「トリコさん、そんな急にたくさん食べるとお腹を壊しますよ。アイスをこぼしたらべたべたするから落ち着いて食べてください」
小松は片手にコーンカップのアイスを手にしながらトリコの世話を焼いていた。シンプルなバニラのアイスが暑さに負けて溶けていく。
「しまった」と慌てて小松は手に流れたアイスを舐めると、だいぶ柔らかくなった塊にかじりついた。
急いでアイスを食べ終えてトリコを見た小松は、彼が持つアイスボックスが減っていなくて驚いた。
「アイスって定番だけどよ・・・」
しみじみとトリコが呟く。
意味がわからない小松だが、ココは「ああ」と返事をしている。
「やっぱ結構な破壊力があるな」
やはり意味不明な言葉に小松が「食べ物ですから!」とつっこみをいれようとしたが、ココは「そうだな」と同意を示す。
彼らふたりの会話についていけず、小松は内心焦った。
「どうしようか・・・」
トリコは食べかけの自分のアイスを眺めながら真剣に悩んでいる。
「トリコ」とココが真顔で声をかけた。
小松は訳がわからないなりにも、ココがトリコを解決に導くのだと期待した。
「パフェにして盛るのはどうだろう? それならこのアイスも食べられる。生クリームは残念ながらないけど、果物の砂糖漬けでいい感じのものがいくつかあるんだ」
「ナイス、ココ!」
ココの提案にトリコは喜んだ。
「・・・なんの話ですか?」
最後まで話が見えず、意を決して小松はふたりに聞く。
「「暑い日においしく食べるレシピ」」
「いいですね! 一体どんな料理ですか?」
ふたりのアイディアの中心にある食材が自分自身だと気づいていない小松は、無邪気に聞き返して身を持ってレシピの正体を知るのだった。
終わり
夏の小松盛り!!