みなさん、飲みすぎ、風邪など気をつけてくださいね!
「10時10分前」
(間に合う!)
小松は時計を再確認する。
10時10分前だ。
昨夜、新年会に行くとココに報告すれば、「10時まで」「お酒は乾杯の1杯だけ」という念が返ってきた。忘年会で酔ったあげくココに電話してグルメフォーチュンから迎えにこさせた記憶は・・・きれいにないが、小松は反省していた。
「はい」と大人しくうなずいて昨日は電話を切ったものだ。
(大丈夫、10分前)
10時になっても帰ってくる気配がなければ、ココはグルメフォーチュンからキッスに飛び乗り小松を迎えに来る。そんな迷惑はかけられなかった。お酒は残念ながら最初の1杯だけで終わらず、足元はふらつくが、吐くほどではない。
アパートに帰り、部屋からココに電話をしてと、帰ってきたと伝えて、と考えながら歩いていた小松は、つまずいて転んだ。
「危ない」傾く小松を支えたのは、グルメフォーチュンにいるはずのココだ。
「おかえりなさい」
「わーココさんだー」
思わず会えた嬉しさに、あいさつも忘れて小松は微笑んだ。顔の筋肉が緩むのが止まらない。
「・・・飲んでる?」
ココが疑わしげな目を小松に向けた。
「一杯だけですよ、グラスは替えませんでした」
約束が守れなかった疚しさに、小松は余計なことを口にした。ビールがグラスにどんどん注がれただけだ。お代わりはしていないと小松は言いたかった。
「前後不覚になってないならいいけど」
ココがため息を吐く。
「・・・ごめんなさい」
反省する小松だった。
「キスしてくれたら許してあげるよ」
ココが冗談で言えば小松は素直にキスをした。夜とはいえ道の往来で交わすキスに、ココの方こそびっくりする。
「・・・帰ろうか?」
「はい」
「今日は泊まるからね。明日はゆっくり、一緒にすごそう」
「やったー!」
大声で小松は喜んだ。
「酔ってるよね?」
「嬉しいときは喜んでって言ったのはココさんですよー」
「それを言ったのは小松くんだから」
「そうでしたっけ?」
「酔っ払い。明日、覚えておいで」
ココの宣告に「はい」と小松はこたえながらも、翌日覚えていなかったのはお約束で・・・。
年度末の歓送迎会は気をつけようと小松は本気で誓うのだった。
終わり