2011'01.28.Fri
4話編・・・後少し・・・。
4-8/リーマンココマ
長い時間話し込んでいたが、日が傾き休憩がてらのお客も入りはじめると小松は席を立った。
「今日は楽しかったです」
ココとの問題は解決していないが、気持ちが切り替わって心が軽くなる。
「また遊びに来ればいいし」
「サニーさんも、本店に来て下さいね。腕を奮います」
「ココが不在の今なら行けるか」
サニーの口から出た名前に、小松はひっかかるものを感じる。トリコのように暴食で店を閉店に追い込むつもりならココは露骨に煙たがるが、サニーは店の食材を食い尽くすような食欲を持っているとは思えなかったのだ。
「この前行ったら、店を追い返された。社内の人間なら忙しいときを狙ってくるなって」
ムカツク! とサニーは言う。小松は、ココからサニーの来店を聞いてなかったので彼の話に驚いた。
ココとは、不在の前まで毎日、休みの日でも話はしていた。聞いてないということは、ココが言うに値しないと思ったのか、忘れていたのか、故意か。
(故意はないよな)
理由が思い当たらず、小松は最後の可能性は否定した。
冬は日の傾きが早く、時間の感覚が狂いそうになる。店からでた小松は、ビルが作る影に寒気を感じた。
冷たい、風が吹く。
「ココさん?」
冷たさに首をすくめた小松は、濃くなる夕闇を背に立つココを見つけた。
黒いコートとスーツを纏った男は、影の使者にも見えた。白いシャツと深緑のネクタイは馴染みのある色だ。普段、きっちりスーツを着込まないココの背広姿に、小松は上司が他人のように見えた。手にした銀の大きいいケースが、出張帰りだと小松に教える。
「おかえりなさい」
反応のないココに小松は声をかけるが、返ってくるものはなかった。
戸惑う小松に、外の様子を感じたサニーが店から出てくる。
「サニーさん」と小松が呼べば、ココの無表情が凄みを見せた。
「どしたし、ココ?」
サニーは身構えた声でココに話しかけた。
「ぼくがいない間にコナをかけるとは、いい度胸してるね、サニー」
ココの言葉の意味がわからず口を挟めないでいる小松だが、サニーは何度か瞬きした後、合点がいったように含みのある笑みを浮かべた。
「ココともあろう男が余裕がないみたいだな」
サニーの台詞がやはり意味不明な小松だったが、ココとわかりあう会話ができるサニーを羨ましく思う。
(付き合いの年季が違うから!)
自分にすかさず突っ込んだ小松は、渦中にいるとも気づかずに成り行きを見守る。
「ぼくの邪魔をするのは許さないよ」
「大袈裟な」
呆れて肩をすくめてココをあしらおうとしていたサニーだったが、ふいに、なにか気づいたふうに顔をあげた。
「まさか、おれの企画の邪魔をしたのはおまえか?」
「管轄が違う」
ただ、と、ココは言葉をつけたした。
「会長に資料を集めるよう指示を受け、いくつかの提言をしたのはぼくだ」
「で?」沈黙の後、サニーは拳を握る。
「おれはおまえを殴っていいて意味か?」
「さてね」
サニーの怒気をココは軽く受け流した。一食触発のふたりの間にはいったのは小松だ。
「待ってください、けんかはいけません」
「どくし、松!」
サニーが呼ぶ小松の名前に、ココのこめかみが見えない単位でひくついた。
「ぼくにはおまえを殴る権利があるな」
「権利ってなんですか!」
物騒なココの発言に小松がびびる。
「理由も聞かずにいきなりけんかなんておかしいです」
「いきなりじゃない、ぼくらは理由がちゃんとわかっている」
「松は危ないから引っ込むし」
ココとサニーが小松を脇にどけようとする。疎外感に襲われる自分の厚かましさを反省しつつも、小松は「でも」と食い下がった。
「邪魔だよ」
ココがサニーを見据えながら小松に言った。煩わしさが漂う声音に、小松は胸の塊が大きくなった気がした。ひっかかったように塊は胸の中心に居座り、息苦しさを小松に与えた。
邪魔者扱いされるのは、随分久しぶりだった。本店に勤務をはじめた頃はスタッフや副料理長と連携がとれずに、精神的にきつい毎日だった。ココを通して周囲とも繋がりを持ち、純粋に料理に打ち込む毎日が楽しくて仕方なかった小松は、余計に落ち込んだ。
一緒の食事も、実はうっとおしく思われていたかもしれないと考えはじめる。悪い考えが止まらない。
苦しくて、哀しかった。
「だったら勝手にしてください」
小松は怒ったふうに言い捨ててふたりに背を向けた。早足で立ち去り、角を曲がったところで走る。遠くから呼ぶ声は小松には届かず、彼を止めることでできなかった。
続く
長い時間話し込んでいたが、日が傾き休憩がてらのお客も入りはじめると小松は席を立った。
「今日は楽しかったです」
ココとの問題は解決していないが、気持ちが切り替わって心が軽くなる。
「また遊びに来ればいいし」
「サニーさんも、本店に来て下さいね。腕を奮います」
「ココが不在の今なら行けるか」
サニーの口から出た名前に、小松はひっかかるものを感じる。トリコのように暴食で店を閉店に追い込むつもりならココは露骨に煙たがるが、サニーは店の食材を食い尽くすような食欲を持っているとは思えなかったのだ。
「この前行ったら、店を追い返された。社内の人間なら忙しいときを狙ってくるなって」
ムカツク! とサニーは言う。小松は、ココからサニーの来店を聞いてなかったので彼の話に驚いた。
ココとは、不在の前まで毎日、休みの日でも話はしていた。聞いてないということは、ココが言うに値しないと思ったのか、忘れていたのか、故意か。
(故意はないよな)
理由が思い当たらず、小松は最後の可能性は否定した。
冬は日の傾きが早く、時間の感覚が狂いそうになる。店からでた小松は、ビルが作る影に寒気を感じた。
冷たい、風が吹く。
「ココさん?」
冷たさに首をすくめた小松は、濃くなる夕闇を背に立つココを見つけた。
黒いコートとスーツを纏った男は、影の使者にも見えた。白いシャツと深緑のネクタイは馴染みのある色だ。普段、きっちりスーツを着込まないココの背広姿に、小松は上司が他人のように見えた。手にした銀の大きいいケースが、出張帰りだと小松に教える。
「おかえりなさい」
反応のないココに小松は声をかけるが、返ってくるものはなかった。
戸惑う小松に、外の様子を感じたサニーが店から出てくる。
「サニーさん」と小松が呼べば、ココの無表情が凄みを見せた。
「どしたし、ココ?」
サニーは身構えた声でココに話しかけた。
「ぼくがいない間にコナをかけるとは、いい度胸してるね、サニー」
ココの言葉の意味がわからず口を挟めないでいる小松だが、サニーは何度か瞬きした後、合点がいったように含みのある笑みを浮かべた。
「ココともあろう男が余裕がないみたいだな」
サニーの台詞がやはり意味不明な小松だったが、ココとわかりあう会話ができるサニーを羨ましく思う。
(付き合いの年季が違うから!)
自分にすかさず突っ込んだ小松は、渦中にいるとも気づかずに成り行きを見守る。
「ぼくの邪魔をするのは許さないよ」
「大袈裟な」
呆れて肩をすくめてココをあしらおうとしていたサニーだったが、ふいに、なにか気づいたふうに顔をあげた。
「まさか、おれの企画の邪魔をしたのはおまえか?」
「管轄が違う」
ただ、と、ココは言葉をつけたした。
「会長に資料を集めるよう指示を受け、いくつかの提言をしたのはぼくだ」
「で?」沈黙の後、サニーは拳を握る。
「おれはおまえを殴っていいて意味か?」
「さてね」
サニーの怒気をココは軽く受け流した。一食触発のふたりの間にはいったのは小松だ。
「待ってください、けんかはいけません」
「どくし、松!」
サニーが呼ぶ小松の名前に、ココのこめかみが見えない単位でひくついた。
「ぼくにはおまえを殴る権利があるな」
「権利ってなんですか!」
物騒なココの発言に小松がびびる。
「理由も聞かずにいきなりけんかなんておかしいです」
「いきなりじゃない、ぼくらは理由がちゃんとわかっている」
「松は危ないから引っ込むし」
ココとサニーが小松を脇にどけようとする。疎外感に襲われる自分の厚かましさを反省しつつも、小松は「でも」と食い下がった。
「邪魔だよ」
ココがサニーを見据えながら小松に言った。煩わしさが漂う声音に、小松は胸の塊が大きくなった気がした。ひっかかったように塊は胸の中心に居座り、息苦しさを小松に与えた。
邪魔者扱いされるのは、随分久しぶりだった。本店に勤務をはじめた頃はスタッフや副料理長と連携がとれずに、精神的にきつい毎日だった。ココを通して周囲とも繋がりを持ち、純粋に料理に打ち込む毎日が楽しくて仕方なかった小松は、余計に落ち込んだ。
一緒の食事も、実はうっとおしく思われていたかもしれないと考えはじめる。悪い考えが止まらない。
苦しくて、哀しかった。
「だったら勝手にしてください」
小松は怒ったふうに言い捨ててふたりに背を向けた。早足で立ち去り、角を曲がったところで走る。遠くから呼ぶ声は小松には届かず、彼を止めることでできなかった。
続く
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