信じられないことに陰陽師シリーズの更新が10日ぶり?
入稿が終わるまで更新は遅くなりそうです。
料理陰陽師小松 其の十
ふと感じた気配に目が覚める。
かすかに風も感じて、戸を閉め忘れたのかと思い身を起こせば、部屋の隅にある銀色の塊を発見した。
犬? 違う普通の動物じゃない。
銀にまじって薄桃、葉色、水色の毛をもつ不思議な妖狐だ。
敵意は感じられない。どちらかというと好奇心の視線だ。
知らない料理を目にしたときのトリコさんに似ている。
この妖怪は美食山に住むトリコさんの友達かもしれない。
トリコさんといいココさんといい、あの山の妖怪は美形だ。
ちかごろ修が忙しくて会いに行ってない。
夜の来訪者はトリコさんたちを思い出させて懐かしくなる。
「トリコさんたちによろしく伝えておいてくれませんか?」
声をかけるが返事はいくら待ってもなかった。
・・・沈黙が気まずい。
「ぼくになにか御用ですか?」
わざわざぼくのところにきたのだから、用事があると考えるのが普通だよな、うん。
「わっ」
気づけば、妖狐に肩を押されて押し倒される。妖狐に殺す気があるなら瞬殺ものだ。
見上げれば牙が近い。でも間近で見た毛並みにも目が奪われる。夜なのにひかり輝いている。太陽の下でなら別の輝きを見せてくれそうだ。
「きれいだなー」
思わず呟いていた。
「おまえ、ばか?」
妖狐が喋った。第一声が「ばか?」?
「襲われてるのにきれい、はないだろ」
「ぼく襲われてたんですか?」
「やっぱばかだ」
妖狐が盛大なため息を吐き終える頃には人型に変化していた。長い髪は銀をもとに薄桃、葉色、水色がある。
虹のようだ。
「やっぱりきれいだ」
「あったりまえだろ」
ぶっきらぼうな返事だけど、揺れる尻尾が喜びを表している。
微笑ましくて嬉しくなった。
続く