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WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2024'09.22.Sun
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2011'04.11.Mon
拍手ありがとうございます!
最近気付けば一月は拍手更新していない体たらくぶり・・・。
時がたつのは早い!
がんばります!!!

「不思議空間1」パラレル

 彼女が喜ぶだろうと思ってリサーチしたバーで小松は待ち合わせをした。
 不規則な職業の小松が動けるとなると、深夜か早朝でしかない。
 店に入れば薄暗い照明で、カウンターの暖かな明かりに誘われるように、バーテンダーに声をかけた。
「待ち合わせなんですけど」
 緊張する声に、慣れていないのを感じたのか「お連れの方が見えるまでカウンターにどうぞ」と勧めた。
 数席のテーブルはほどよい具合に埋まっている。そのなかで待つのは肩身が狭く感じるとびびっていた小松は店の者の心遣いに感謝した。
 細いツールに落ちないように小松は腰かけ、アルコールは強い方ではないので弱めのを適当に作ってもらうよう頼んだ。
 飲み物ができるのを待つ間、小松は男を観察する。
 文句なしにかっこいい男だ。優しげな印象ではあるが、弱そうなタイプで見えない。闇に溶け込みそうな黒髪が薄暗い店内に映える。
 ふいに携帯が鳴り、小松は電話にでた。彼女からの用件は簡潔で、もう会わないという内容だ。
 ショックだったが、「やっぱりな」という思いがしたのは、前から予想していたからかもしれない。
 はあ、と、それでも出るため息を飲み込めない小松の前に、細長いグラスが置かれた。
 アルコールは明るめな色で、グラスの淵にはカットした果物が添えられ、シャーベットが盛られていた。一瞬ジュースかと思ったが、外見に魅かれて口にすれば、美味なるハーモニーに小松の心は踊った。
「わ、おいしい!」
 ため息をついていた人物とは思えない弾んだ声がでた。
「喜んでもらえてなによりです」
 微笑むバーテンダーに慰められた気がして、小松は気恥ずかしくもあり嬉しくもあった。

 職場とアパートの中間にある店は、その後小松の隠れ家的な空間になったとか。

続く

「不思議空間2」パラレル

 店に入れば、薄暗い照明と「いらっしゃいませ」と今では聞き慣れた声が小松を出迎えた。
 彼女に振られた場所ではあるが、ショックな記憶も上書きされるほど気に入った店だ。
 落ち込んだ時に出された飲み物は小松の気持ちを明るくさせ、彼の気配りのよさに同じ接客業として見習うべきものを感じた。
 しかも料理がおいしい。
「料理だなんて大層なものじゃありませんよ」と、彼は謙遜する。
「そんなことありません。ココさんの料理はおいしいです」
 小松が熱弁すればココは苦笑した。
「それは飲み物と料理の組み合わせと、なにより素材がいいからです」
 料理の腕は自慢できないから、素材の味を殺さない調理しかしないとココは言う。
「素材、ですか?」
 いい仕入先をもっているのかと小松が考えていると、店のドアが少々乱暴に開いた。
「夜光鳥が手に入ったんだ、なにか作ってくれ」
 大きな青い髪の男が手にした三羽の鳥をココに差し出す。
 夜にしか活動しない夜空の色をした鳥はレアで、小松はびっくりした。
(うわ、昔、事務局長に連れていってもらったお店で食べたきりだな)
 美味だったー、と小松が回想に耽る。
「なんだ、このちっこいの?」
 男はココに、鳥を凝視する男について聞いた。
「お客さまだよ、無礼を働くなよ、トリコ」
「ひとを野蛮人みたく言うな」
 ふたりのやりとりは気さくで、憎まれ口を叩いているようで親しげな空気を感じた。
(あれ?)
 胸のなかがもや、っとして小松は首を捻った。
「つーか、どこの店のもんだ?」
「ヤクザみたいな口の利き方はやめてくれ」
「いや、絶対こいつは」
 トリコは顔を小松に寄せて匂いを嗅ぐ。
「高級レストランの料理人だな」
 断言するトリコに、「そうなの?」とココが小松に聞く。いつも丁寧に喋るココだが、驚いているのか素の表情だ。
「そ、そうです」
「コーコ、常連の話ぐらい聞けよ?」
 トリコの発言は、まるでココが小松に興味を持っていないように聞こえて小さな青年を落ち込ませた。
「いいから、おまえは喋るな」
 ココがトリコを叱る。
「お詫びに小松くんにも夜光鳥をお裾分けするぞ」
 すでにココのなかでは決定事項だ。
「いえ、そ、そんな!」
 一体どうしたらそんな流れになるのか、驚く小松にココは笑いかける。
「食べたかったんだよね?」
 友人と話していた気安さがココの気持ちを緩ませたのか、小松への口調がフレンドリーだ。嬉しいと感じる自分を小松は不思議に思う。
「食べたい、です」
 厚かましさに頬を染めてこたえる小松に、ココは満面の笑みを浮かべる。人の心が読んだようなココの気配りは頼もしく、どんどん小松を引き込んでいく。
(ミステリアスなひとだよな)
 体温の上昇を柑橘系のアルコールのせいにして、小松はまた一口飲んだ。

続く

「不思議空間3」パラレル

 小松が店に入ると、カウンターには青い髪の青年と虹色の髪をした青年がいた。
(男?)
 体格の良さから男性とわかるが、あまりに長い髪が一瞬小松を勘違いさせた。
「いらっしゃい」と出迎える声はココのもので、最初に比べたらずいぶんと気さくなあいさつになった。それでも、従業員と客というラインが強固にあり、小松は少し淋しくなる。
「このちっこいのがレストラングルメの料理長ってホント?」
 初対面にしては無礼な台詞だが、突飛なできごとはこの店に通うようになってから慣れたので小松は動じない。
「若輩ながら」
「サニー、小松くんに絡むな」
 ココはサニーをたしなめながら、彼の前にグラスを置いた。小さなグラスを彩るカクテルは何層にも別れていて、サニーの髪を思わせる派手さがある。
(センスいいよなー)
 ココが作る飲み物は全部制覇した小松だが、はじめて見るのだから、きっと彼専用なのだろう。容易に想像できて彼らの仲の良さを知る。
「そーだ、小松、なんか作ってくれよ。今日いくつか旬のものを持って来たんだ」
 トリコがいい案だといわんばかりに口にした。いつも、酒が入っているのを理由に小松は断ってきたが、飲む前に言われては酔いを理由に断れない。
「いえ、でも」
 小松はココを横目で見る。この店はココの店だ。いわば、聖域である。他人が勝手に土足であがっていい場所ではない。以前、同じ口上で調理を断れば相手に激怒され、相手を理由に断るのを小松は口にしなくなった。
「ひとさまの厨房では使い勝手が利かないので、うまく調理できる自信がありません」
 自分に自信がないと言えば、大概のものは失笑とともに納得する。
「おもしろくないこと言うな」と、つまらなさそうにサニーは言うがココは違った。
「ぼくに遠慮しなくていいんだよ?」
 小松の心情を読み取ったかのようにココが言う。
「おまえほどの料理人が使い勝手で左右されないだろ」とトリコも援護射撃をした。
「なに? おまえ、おれをたばかったっての?」
 サニーの目が据わる。美貌の青年が睨む姿は、いろんな意味で迫力があって小松はびびる。
「わかったし、松の店で食事しろって意味だな。食材の持込みはおっけ? 美容にいいメニューを用意しろよ」
「え? え?」
「いいなー。おれも一度レストラングルメを食い尽くしたかったんだ」
「食い尽くす?」
「ふむ、明日は臨時休業の張り紙を用意しないとな」
「ココさんまで?」
 急激な展開についていけない小松は悲鳴をあげた。
「ふぐ鯨の産卵があたり年になるらしい」
「BBコーン、久々に食ってみたいな」
「ジュエルミートどうよ?」
 捕獲レベルの高い食材を平気で口にする彼らに、小松ははじめて「何者だ」と思った。
 いつもの呑気な店内とは違った空気が彼らから漂う。
(待てよ)
(ココさん、トリコさん、サニーさん・・・)
「もしかして、美食屋四天王の・・・?」
 小松が恐る恐る口にすれば、呆れたような三対の目が一斉にむけられた。
「なんだ、今頃気づいたのか」
 肯定するトリコの一言に、小松は死んだ。
「小松くんだからね」
 ココがフォローをいれるが、なににたいしての慰めなのか謎だ。
「おもしれー奴じゃん」
 サニーに至っては楽しんでいる。
(だって・・・)小松にも言い分がある。
 この店で会う彼らは存在感が際立ち、背景を忘れてしまうぐらい素敵なのだ。
 盛大に落ち込み、まっかな小松を、彼らは楽しそうに見ている。だが、ばかにした訳ではなく、親しみがこもった優しい感じがする瞳だ。
 店内に満ちる不思議な空間と同じく、それは小松の心をふわりと、させた。

 翌日、四天王(-1)ご一行に料理を作り続けた小松はぐったりするのであった。

終わり
 

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