ようやく今回最終回です!
みなさんの萌に納得できるようなラストかどうかが気になります。
14/時を駆ける小松
「トリコ、小松くんが目を覚ましたのか?」
階段を駆け上がる音とともに、ココさんの声が聞こえた。トリコさんの肩を叩いてどいてもらう。
「よかった。体は大丈夫? 床ずれを防ぐためトリコがまめに寝返りをさせていたから大丈夫だと思うけど」
「ええ!」
なんか恥ずかしくてトリコさんの顔が見られない。
「2回転ぐらいさせてもぐーすか寝てたし」
確かにトリコさんのベッドは幅が広いけど、寝返り2回転なんて普通はやりません。
「10年ドラマな夢を見てたらしいぜ」
トリコさんがココさんに言う。
「へえ」とこたえるココさんは呆れた風ではなかった。
「いい夢だった?」
聞かれても、内容は忘れたからこたえにくい。でも胸には暖かな感触が残っているのでこたえは決まっている。
「はい」
「なら、よかった」
ココさんが微笑む。隣でトリコさんが「よくない、人騒がせだ」と文句を言う。
「人騒がせじゃなくて、心配してた淋しかったの間違いだろ?」
ココさんの指摘にトリコさんは膨れた。
「昔っから素直じゃない奴」と言ってココさんは笑う。
「えーっと、ぼく、そこの果物が食べたいです」
ぼくの強引に話を変える。
「そこ?」とトリコさんが言うので「足元の籠にあるやつです」とこたえる。ベッドの端から移動して床を覗き込めば、籠いっぱいの果実があった。
「よく気づいたな」
トリコさんが感心する。
「匂い、でしょうか?」
そういえば、身を乗り出さないと見えない場所にあったのに変だな。
「果物もいいけど、胃に優しいものを作るから待っていてね」
ココさんが1階の台所へと降りていく。
「よし、おれが皮を切ってやる」
トリコさんは果実を手に取ると、指のナイフで4等分に切り分けて芯と皮を剥いた。器用なナイフだ。
「その果物、珍しいですね」
見たこともないのに見覚えがある。食材リストに載っているものかな。
「品種改良に失敗したやつだ。庭にいた頃、捨てられた苗を森に植えたらでっかくなって実がついた。うまくておやつによく食ったぜ。おまえに食わせたくなった」
だから採ってきたとトリコさんは言う。
「ありがとうございます」
一口かじる。あれは、こんな味だったんだ。
「誕生日おめでとうございます」
唐突にぼくの口から祝いの言葉がでてきた。
「今このタイミングで言うか!?」
「違ってましたか?」
「嬉しくてあれこれしたいのに、何日も寝てたおまえにいきなりいろいろできねえじゃないか!」
あまりの嘆きっぷりに、「あほですか」とツッコみ損ねた。変わりに笑った。トリコさんも笑ってくれるので、首にぎゅっとしがみついた。
ごめんさない、勝手にあなたの過去を不幸だと決めつけてしまった。楽な道のりではなくても、今ここに笑うトリコさんがいるなら、過去の出来事もきっと苦しいばかりじゃないと思えた。
『おまえがこうして、おれを心配してくれる』
トリコさんの声が再現された。いつ言われたのか忘れてしまったのが悔しい。
トリコさんの髪から薫るシャンプーが、以前と違うのを少しだけ淋しく思うのは何故だろう?
終わり
本来はトリコBD話でした。いや、今でもトリコBD話ですが!
ちょっとファンタジーな印象の話になりました。トリコの過去話はいまだ不明な部分も多いのでフライングかもしれませんが、チェインアニマルなトリコに憤る小松を書けたのが楽しかったです。
今まで応援してくださって本当にありがとうございました!