グルメ102「ケンカの時間」
この世の食材で一番高い位置に生る食材「オゾン草」は天使の主食だと言われている。
空と食材の憧れから言われるようになったのだろう。ハント前日は楽しみでトリコは寝られなかったぐらいだ。
どんな味なのか想像するだけでトリコは楽しくなってくる。障害もあるだろうがハントに危険はつきものだ。
しかし未知との遭遇は想像していなかった。
「ありゃ?」
蔦をのぼって来た先には、ひとが空に浮いていた。人間と呼ぶかどうか疑わしい。背中に白い羽が生えているのだから。
(まさか美食會か?)
奇異な恰好にトリコは一瞬疑うが、のほほんとした顔立ちに気が緩む。
(どっかで見たことがあるような・・・)
「人間界の方がここまで来るなんて珍しい!」
背中の羽は彼の驚きを表すように大きく揺れた。
「おれはトリコ。おまえは?」
「天上界の小松と言います」
「天上界?」
「空の上にある世界です」
「そんな世界があるなんて知らなかった」
トリコは驚くが、グルメ界も地球の時間でいうなら知られるようになったのはつい最近だ。まだ知らない世界があってもおかしくないと考え直す。
(しかしどっかで見たことがあるような・・・)
愛嬌のある顔をトリコは無遠慮に眺める。
「お腹が減ってますか? ここまで来るのは大変ですからねえ」
彼はどこかずれたことを口にした。腕に抱えるオゾン草をトリコに差し出す。
「おいしいですよ。陽光を浴びたばかりのオゾン草は元気をくれます」
差し出すオゾン草と、その手が、気持ちが、トリコに元気を与える。
(おれはこいつを知っている)
トリコはオゾン草を受け取った。
「早く起きて下さーい、トリコさん!」
耳元でわめく声にトリコは目を覚ました。
「天使?」
夢と現実が曖昧な呟きは小松に届かず、トリコの布団を豪快にひっぺがした。
「朝ごはん覚めますよ? ハントに行くんですからしっかり食べて下さい」
料理の途中でトリコを起こしにきた小松は、慌しく寝室から去った。
彼の背中に羽はないが、見えた気がしてトリコはにやける。
―幸先のいい夢だ。
ハントの成功を確信したのが小松に似た天使を見たからだと言えば、聞いた者みんな呆れるだろう。
「弁当はあるかー?」
階段を降りながら聞けば、
「もちろんですよ、トリコさんスペシャルですー」
とかわいらしい返事があった。
元気も、愛も、料理も、トリコの欲しいものすべてをくれる、いとしいひと。
天使な小松が妄想で舞い降りたので・・・!!