2010'07.17.Sat
気づけば大体土曜日更新な「時を駆ける小松」。
13/時を駆ける小松
時が流れる。
家の中から台風を眺めているようだ。濁流のなかにひとりいるような錯覚がする。
絹鳥の卵を抱えて獣から身をかわすトリコさんがいる。新種の食材を見つけるトリコさん。瞬きの間に時代が変わる。意識を集中しないと、思考がばらばらになりそうだ。
釣りに行くといってでっかい竿とクーラーボックスを抱えて湖にでる。
トリコさんが手にする果実は見覚えがある。今は5月?
風が走るように林道を走る。見慣れた道。スイーツハウスが見えた。ぼくは家のなかに入っていた。厚かましくも寝室だ。ベッドにむかってトリコさんの背中が見える。足元の籠には見覚えのある果実。
また5月か?
「小松」
トリコさんの必死な声が聞こえた。ぼくは、ぼくのいる時代に戻ってきたんだと思った瞬間、体が重くなった。
「小松」
柔らかな背中の感触、甘い匂い、空気を震わせるトリコさんの声。
ぼくは帰ってきたんだ。
「トリコ、さん?」
声をだせば掠れた感じがして違和感を感じる。
「目が覚めたか、小松」
目が覚める?
「梅田からおまえと連絡が取れないって聞いて家に帰ってみれば、おれがいない間に上がりこんだおまえは何日も眠りっぱなしだったんだぞ」
「10年も?」
「なんだよ、10年って?」
トリコさんの呆れた声に言い返そうとして、なんで10年だったのか思い出せなかった。
「長い夢を見ていたので・・・」
でも、夢の内容が思い出せない。胸が張り裂けそうな哀しみや、満ちていく幸福は感じるのに不思議だ。
「ひと騒がせな奴だ」
トリコさんがぼくの覆いかぶさり、抱きしめた。青い髪からりんごの香りがする。
「シャンプーを変えたんですか?」
「おう、うまそうな匂いだったからな」
単純な理由にぼくは笑った。
「でもぼくがあげた石鹸も使ってくださいね」
「それはまあ、おいおい、いろんなことに使わせてもらうから安心しろ」
洗う以外の用途ってなんだ?
続く
次回いよいよ最終回!
時が流れる。
家の中から台風を眺めているようだ。濁流のなかにひとりいるような錯覚がする。
絹鳥の卵を抱えて獣から身をかわすトリコさんがいる。新種の食材を見つけるトリコさん。瞬きの間に時代が変わる。意識を集中しないと、思考がばらばらになりそうだ。
釣りに行くといってでっかい竿とクーラーボックスを抱えて湖にでる。
トリコさんが手にする果実は見覚えがある。今は5月?
風が走るように林道を走る。見慣れた道。スイーツハウスが見えた。ぼくは家のなかに入っていた。厚かましくも寝室だ。ベッドにむかってトリコさんの背中が見える。足元の籠には見覚えのある果実。
また5月か?
「小松」
トリコさんの必死な声が聞こえた。ぼくは、ぼくのいる時代に戻ってきたんだと思った瞬間、体が重くなった。
「小松」
柔らかな背中の感触、甘い匂い、空気を震わせるトリコさんの声。
ぼくは帰ってきたんだ。
「トリコ、さん?」
声をだせば掠れた感じがして違和感を感じる。
「目が覚めたか、小松」
目が覚める?
「梅田からおまえと連絡が取れないって聞いて家に帰ってみれば、おれがいない間に上がりこんだおまえは何日も眠りっぱなしだったんだぞ」
「10年も?」
「なんだよ、10年って?」
トリコさんの呆れた声に言い返そうとして、なんで10年だったのか思い出せなかった。
「長い夢を見ていたので・・・」
でも、夢の内容が思い出せない。胸が張り裂けそうな哀しみや、満ちていく幸福は感じるのに不思議だ。
「ひと騒がせな奴だ」
トリコさんがぼくの覆いかぶさり、抱きしめた。青い髪からりんごの香りがする。
「シャンプーを変えたんですか?」
「おう、うまそうな匂いだったからな」
単純な理由にぼくは笑った。
「でもぼくがあげた石鹸も使ってくださいね」
「それはまあ、おいおい、いろんなことに使わせてもらうから安心しろ」
洗う以外の用途ってなんだ?
続く
次回いよいよ最終回!
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