料理陰陽師小松 其の五十八
どうしてトリコさんはぼくを食べないんだろう?
味を確かめているのか?
あまりに長い間、触れられたせいか、そんな意味などないだろうに、変に体が反応する。
訴えれば、地面に寝かされた。早急な、だけど優しい感じだ。
これから食べてしまう人間にそんな丁寧にしなくていいのに。
ぼくに覆い被さるトリコさんの表情は影になっているけど、目の輝きだけははっきりと見えた。
飢えた感じだ。妖怪がひとを狙うときの表情に似ている。
でもトリコさんのは他の妖怪が見せる雰囲気と感じが違う。
「小松」と名前を呼ばれて、あらぬところが疼く。
泣きそうになった。
助けてほしいと思った。それは自分の命がおしいからじゃなくて、もっとなにか、根本的ななにかが苦しくてたまらない。
「トリコ、さぁん」
呼べば、トリコさんはぼくを覗き込んだ。視界は薄い膜に覆われてトリコさんがうまく見えない。
トリコさんがぼくの目じりを舌でなぞる。近い体温に息が上がる。
気持ちいいなんて、変だ。
トリコさんがぼくの唇を食む。柔らかな部位から食べるのだろうか?
ふいに舌が口内に入ったので驚いた。トリコさんの舌は大きくて、口いっぱい広げても苦しい。舌の付け根や上顎をつつく感覚にぼくは呻いた。
気の済むまでトリコさんはぼくの口内を味わい、離れた。舌がゆっくりと出て行くのが気恥ずかしかった。
口の周りは唾液で汚れてしまったけど、トリコさんはそれを舐めた。
「うめぇ」
恍惚に聞こえる呟きに、聞いていたぼくは頭が破裂しそうだ。
なにがおいしいのかわからない。味覚が違うのかな?
再びトリコさんはぼくを舐める。食べるのにこんなに時間をかけるものだとは知らなかった。
ふいに、下肢の衣が取り払われた。た、たしかに食べるのに着物は邪魔だけど、見られたくない部分まで見られて本気で泣いた。
「見ないでください」
ぼくのそこは、情けないことに勃起していた。慌てて隠そうとした手をトリコさんが掴んで止める。
「うまそうだな」
トリコさんが自分の唇を舐める。
性器がおいしくあるはずないのに、これも感覚の違いだろうか?
トリコさんがぼくのそれを舐める。
「やぁあ!」
腰が跳ねてトリコさんに押し付ける形になって、二重三重にも恥ずかしさを味わった。
さらなる羞恥がぼくを襲う。
トリコさんがぼくのを咥えた。食いちぎられるのかと一瞬怯えたが、恐怖を凌駕する快楽がぼくをさらう。
「だ、め。トリコさん」
トリコさんの食の行為に、ぼくは興奮した。そこを刺激されて反応しない方が男としておかしいのはわかっているけど恥ずかしい。
「離して、トリコさん、出ちゃう」
「出せよ」
ぼくの限界を察したトリコさんが、思い切り吸う。解放の誘惑に勝てなかった。
「あぁ、あ・・・!」
気持ちよさに震えるぼくの腰を、宥めるように撫でながらトリコさんの喉が鳴る。
「うめえな、おまえの」
うっとりと呟く声は、続いて「もっとくれ」とぼくに告げて再び咥える。
何度トリコさんに吐精を強いられたかわからない。
いつ食べるんだろうと、意識が朦朧としたとき、尻の狭間にトリコさんの指が侵入してきた。
「な、なにを?」
「ん? 柔らかくしないとな」
そんなところを柔らかくしてどうするんだろう?
続く
こんなところで!?