雨宿り
夏の通り雨が叩きつけるように大地に降る。
自然界は猛獣だけでなく、自然もふたりに猛威をふるった。
木の下に避難したトリコと小松は急にできた時間を持て余していた。
「止みませんねー」
「すぐに止むだろ」
こういったときのトリコは慌てない。
木々の隙間から雨が肩に落ちて、小松は無意識にトリコの方へ移動した。すぐにぶつかり「すみません」と小松は謝る。反射的に離れようとした小松は、ぬかるみに足をとられて転びそうになる。トリコは片手で小松を支えた。
「そそっかしーな」と笑う目元が優しくて小松は変に意識した。雨の冷たさに反してトリコの手が温かい。
ハントは小松にとって日常といっていいのに、雨が、非日常的な空間を作り出した。
「トリコさん・・・」
間が持たなくて名前を呼べば、トリコが小松に顔を寄せて匂いを嗅いだ。
「おまえは濡れていても美味そうだ」
「いや、おいしくないですから」
トリコがなにを言いたいのかわからず小松が否定すれば、今度は冷たい唇にキスが降る。
「食べてしまいたいぐらい好きだって意味」
ひとの唇を了承もなく奪った男は、小松を見てにやりと笑った。
「おまえは?」
思い立ったが吉日の男は返事もせっかちだ。
「ぼくは…」と続く言葉に雷が重なる。
唇の動きで返事は伝わるはずだと思った小松だが、トリコは引き下がらない。
「おまえの声で聞きたい」
返事がわかっている男の顔はしまりがなく、小松は恥ずかしさにやけになってトリコの耳をひっぱった。
「好きです!」
雷に邪魔されないよう大声で言い、仕返しだとばかりに耳を噛んだ。
終わり