見切り発車です。どれくらい見切りかというと、この話がどこに進むかまったく考えていないぐらいです。
私が見切りと言ったら本当になにも考えずに書き始めたのです! ミステリー列車ならぬミステリー連載です(どこに行き着くかわからない点でいえば)。
トリココマの日常的な話をつらつらと。
「日々に転がるダイヤモンド01」
レストラングルメは連日賑わうが、今夜は拍車をかける人物がふたり、店に訪れていた。
美食界のカリスマ「四天王トリコ」と、最近まで表舞台から姿を消していた「四天王ココ」だ。
食事のスピードと量が並ではないトリコと、意外とよく食べるココのためにひとつのテーブルに給仕が三人もつく戦闘態勢だった。
「意外だよね」
ココがメインの肉料理にナイフをいれながら呟いた。
食べるのに一生懸命なトリコは目線で「なにが?」と友人に聞き返す。
「ハントではうるさいぐらいなのに、今は雰囲気がまるで違う」
目線を横に向ければ、遠方で客にあいさつをする料理長の姿が目にはいった。
トリコもココの言わんとするのを理解して同意をこめてうなずく。
「知らないひとのようだ」と茶化した物言いをするココが、結構本気でショックを受けているのに気づいてトリコは呆れた。
知らないことなど、多々ある。
この肉料理のソースも、以前ハントでアイディアを得たと試行錯誤して作り上げたものだ。
はじめて味わう味だ。知っていても知らないことなど、これから増えていくだろう。
その点トリコは臨機応変にできていた。
「いっぺんに全部知るなんておもしろくないだろ」
「呑気だな、おまえは」
「ココが短気になる理由がわかんねぇ」
「そう?」
ココは意味深げにふふ、と笑った。きれいな唇に切り分けられた肉が運ばれる。
(店内にいた女性客が呆然とした瞬間ベスト3に入るほど絵になる光景だったと後で給仕が熱く語った)
「草食系ではないって意味だよ」
ココの発言を盛大に笑い飛ばしたトリコは、給仕とココにたしなめられるのであった。
続く