いつも拍手ありがとございます。
オフに気を傾けつつもサイトも更新(っていうか話)していきたいですね!
「唇にパッション」 トリコマ
葉巻樹を吸わせてくださいと言えば、トリコさんは目をまるくした。
「子供みたいなだな」
たばこを吸いたいなんて台詞、小さい頃なら誰もが口にするだろうけど、ぼくはれっきとした大人で、たばこは普通に吸える年齢だ。
ただ、トリコさんが吸う葉巻樹は特殊だ。
あまりのきつさによほどの愛煙家、しかもきついのが好きというひとしか好まれない。
吸うにしても商品として加工されたものはきつさが落ちたものだ。
トリコさんが吸う葉巻樹は天然もの。
折ったものを直接吸っているのだ。市販されたものとは違う。
実は、すごく気になっていた。
「ほらよ」と吸っている葉巻樹をさしだされた。
口にして少し吸ったとたん・・・むせた。
喉がひりつく。
「小松にはきついだろ」とトリコさんは笑ってぼくの手から葉巻樹を持っていき、そのまま咥えた。
口内に残る苦味はトリコさんと同じもので。
いずれは消えてなくなるこの味を、ぼくはゆっくり味わう。
「もふもふ」 トリコマ
トリコさんがあまりにテリーをもふもふするから、実はすごく気になっていた。ぼくはテリーに触れたことがない。
トリコさんの相棒を、愛玩動物のように触れてはいけないと思ったからだ。
だけど、トリコさんがテリーの首をぎゅっと抱いたのを見て、ぼくもやってみたくなった。
思い切ってお願いしてみれば、トリコさんは不思議な顔をした。
「いいぜ」とこたえる声が「訳がわからない」と語っている。
テリーの首に両手を回す。
テリークロスと名づけたくなるほどの柔らかさだ。そして暖かい。
安心する気持ちが出たのか、長い間、抱きしめていた。トリコさんが急に背後からぼくとテリーを抱き込んだ。
「やきそう」と呟く意味がわからなくて、目線だけでトリコさんを見上げれば、テリーが相棒の顔を舐めるのが見えた。
テリーに宥められるトリコさんがかわいくて笑う。
ぼくはトリコさんの青い髪に手をのばしたもふもふした。
テリーほど柔らかくなくても、じゅうぶんに暖かくて気持ちよかった。
「迷路のような森のなか」 トリコマ
気がついたら走っていた。
トリコさんのハントに同行するようになってからというもの、体力がついたのか息切れがしない。それとも、体力の限界に気づけないほどぼくはテンパっているのかもしれない。
走れ、走れ。
でもぼくはどこに向かっているの?
ふいに、木々がひらいた。
眼前に泉が陽のひかりを浴びてきらめいている。
ぼくを見つけたテリーが一声吼えた。
とっくに気づいているだろうに、トリコさんが振り返る。
「遅い」
ぼくはトリコさんとはぐれたから走ったのか?
わからない。
トリコさんから遠ざかりたかったのか、近くに行きたかったのか。
わからない。
こんなにも気持ちがざわめく理由がわからない。
トリコさんの大きな手がぼくの頬を包んで涙を拭う。
トリコさんの指先から葉巻樹の香りがした。
迷走する小松